【情シス奮闘記】第1回 「Google Apps」と「iPad」で、ゼロから不動産営業をIT化

  • 2016/8/10
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2016/08/10

安東史朗・アセットリード マーケティング事業部課長

安東史朗・アセットリード マーケティング事業部課長

発端はアウトバウンドからインバウンド営業へのシフト

アセットリード(東京・新宿)は投資マンションを手がける不動産会社。アセットリードを中核企業としてグループ5社で投資マンションの開発、販売、入居者募集、物件管理、売却などを行っている。

同社で社内のIT化を進めているのが、マーケティング部の安東史朗(あんどう・しろう)課長だ。同社の従業員は120名で、うち50名は営業担当者。社内システムは安東課長とアシスタントの2名で担当しているが、実際は「いわゆる私一人が専任の『一人情シス』」(安東課長)という。

アセットリードがIT化を推進した背景には「業界の体質がある」と安東課長は話す。

不動産営業は、業界的にIT化が遅れており、新規営業のアプローチも、テレアポをとって訪問といういわゆるアウトバウンド営業がまだまだ一般的だという。そこで、同社の北田理社長がその現状を打破しようと、Webからの問い合わせでアプローチするインバウンドスタイルへのシフトを表明。2年前から積極的なIT投資を軸にした、様々な改革に取り組みを始めた。

安東課長は手始めに投資セミナーなどを企画し、そこから新規顧客を獲得する流れを構築。その一方で、「営業部担当者のIT化を進めたい」という社長の要望を受けた仕組み作りに取り組んだ。

安東課長はWebデザイン、マーケティング、セミナーの企画担当として2014年にアセットリード入社。その後、ITの知識を買われ、同社のITシステム全般の企画や導入、運用を担当する。

安東課長はWebデザイン、マーケティング、セミナーの企画担当として2014年にアセットリード入社。その後、ITの知識を買われ、同社のITシステム全般の企画や導入、運用を担当する。

当初はSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の導入を検討した。

しかし、コスト面、そして「不動産営業は古い体質で、多くの会社ではまだまだExcelベース、紙ベースで業務が行われ、担当者のスケジュール管理も、ホワイトボードに書くだけというスタイルが一般的で、営業の社員が十分に使いこなせるだけのITリテラシーがない」(同)と判断。また「大幅にやり方を変えてしまうと、営業担当者たちが使いこなせず、宝の持ち腐れなる」(同)という理由から導入を断念した。

こうした中、目にとまったのがグーグルのクラウド型オフィスアプリケーション「Google Apps for Work(Google Apps)」だった。「営業のIT化を進めていた頃、『Google Apps』が普及し始めていた。Google Appsのスプレッドシートは『共有できるExcel』で、複数のユーザーが同時に同じシートを更新できる。この点に注目した。これならExcelに慣れた営業担当者でも使いこなせると考えた」(同)という。

そこで安東課長は社長に稟議を上げ、同時に北田社長が希望していたタブレット端末「iPad」の55台とともに導入を決定。SIer経由で、Google Apps、そしてiPadを破損時には交換できるリース契約の形でソフトバンクから調達した。

導入で営業会議時間が半減、質も変化

Google Appsの導入後の当初は、見込み管理から活用を始めた。具体的には顧客ごとに営業担当者が商談の確度や内容といった進捗をシートに随時記入し、それを社長がチェック、コメントしていくというやり方だ。

その結果、「これまで、毎週月曜の午前中に営業会議の場でチェックを行なっていたが、事前にシートで情報共有ができるようになったため、商談に関する密度の濃い会議が行えるようになり、時間も半分にすることができた」(同)という。

同時に「会議準備のために、課長クラスの社員が行なっていた資料集めの必要もなくなり、業務効率化も進んだ」(同)。また、スケジュール管理を行うGoogleカレンダーと組み合わせることで、担当者の動きの把握が可能になり、日々の営業報告業務の効率化も進んだという。

一方で、苦労もあった。営業担当者のITスキルから導入を決めた「Google Apps」の利用は狙い通りに進んだが、同時に採用したiPadは使い方が分からない社員が多かったため、なかなか利用が進まなかったのだ。

iPadを導入し、Google Appsを利用

iPadを導入し、Google Appsを利用

具体的には「邪魔になるから持ち歩かない、家に置いたまま、商談時に使用しない、ゲームしかしない人がいた」と安東課長は振り返る。そのため、使い方のレクチャーを行ったり、iPadでしか管理業務ができないようにシステムを組んだりして「iPadを使わざるを得ない状況を作っていった」(同)という。

こうした努力の結果、今では全営業担当者がiPadでの業務管理ができるようになった。また、紙ベースの時には商談後、必ず会社に戻ってきた報告もiPadを使うことで不要になり、営業担当者の直行直帰も可能になったという。

さらに、iPadに、新規開発した投資シミュレータアプリをインストールし、共有の物件情報や物件の空き室情報と一緒に利用することで、商談の場での確度を高めるツールとして活用している。

投資マンションのローンをシミュレーションするアプリの画面

投資マンションのローンをシミュレーションするアプリの画面

また、投資セミナーの開催時に、出席者の情報とセミナーでの反応をリアルタイムで共有。その場でアプローチをかける営業のフォローアップツールとしても利用している。面白い使い方だが「これがまさにインバウンド営業の強化に役立っている」と安東課長は話す。

情報共有の強化で“不動産テック”を目指す

安東課長は、もともとシステムインテグレーションの会社でEC(電子商取引)システムの企画提案として働いていた。そして、Webからの流入強化担当として、アセットリードに入社した。

現状はITシステムの取りまとめを1人でこなしているが、Google Appsについては、クラウドサービスのため「データが外にあり、機器の入れ替えも手間がかからないため、運用はさほど負荷を感じない」(同)という。

一方で、実際に運用していく中で、Google Appsには使いにくい点があることが分かった。また、営業担当者もiPadの操作に慣れてきたこともあり、「グループウェアと顧客データベースを組み合わせたシステムのリプレースを考え始めている」(同)という。

目的は「情報の蓄積と共有の強化」と安東課長は説明する。そして「金融のフィンテックのように、『不動産テック』を実現していきたいと考えている」(同)と話す。社内には物件CGを制作する部門があり、そこで開発したVR(仮想現実)内覧システムをiPadで活用するプロジェクトも進めている。

Google Appsのスプレッドシートによる情報共有は、目新しさはない。しかし、安東課長のいう業界体質という背景もあり、ITリテラシーの高くない営業担当者にとっては使いやすいツールいえる。今回の事例では、現場に寄り添う情シスの姿勢が、IT化推進の成功要因となったといえるだろう。

 

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