【情シス奮闘記】第5回 MAで見込み客管理を向上 導入を契機にターゲット像を再認識 おかん

  • 2016/11/15
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2016/11/15

おかんは2012年に設立したベンチャー企業だ。総菜提供サービスを手がける。サービスの柱は2つ。注文を受けて惣菜を配達する社食サービス「オフィスおかん」と、惣菜の定期仕送りサービス「おかん」だ。サービス当初は個人向けだけだったが、2014年3月に法人にターゲットを変更。現在は9割の売り上げが法人だという。

同社では今後の事業拡大をにらみ、見込み客への効率的なアプローチを自動で行うシステム「マーケティングオートメーション(MA)」を導入した。その理由と効果について担当した事業推進担当の塩野景子さんに聞いた。(取材・文:櫻庭由紀子)

おかん 事業推進担当 塩野景子さん

おかん 事業推進担当 塩野景子さん

インバウンドで集めた見込み客の把握・管理に課題

おかんの見込み客は、8割がインバウンド(外部からの問い合わせ)だ。同社のサイトに訪れた人が、問い合わせというアクションを起こしてもらうことで初めて見込み客になる。

一般的にベンチャーは最小限の人員で始めるスモールスタートが多い。そのため、社員ひとりひとりが複数の業務を担当することが求められる。そのため、すべての業務に必ずしも十分に手が回るわけではない。

おかんもこの例にもれない。インバウンドでの集客は、アクションを起こしてリードを把握し顧客にする管理手法が有効だ。しかし、問い合わせをしてきた見込み客のフォローや管理が十分とはいえなかった。

この課題をシステムで解決するために起用されたのが塩野さんだった。しかし、塩野さんは本来の業務はマーケティング。情シスではない。システムにも決して詳しいわけではなく、情シスの仕事も未経験だった。

しかし、社内での意見を把握する能力などが買われ、このプロジェクトを任された。その塩野さんは「アプローチのタイミングが合わなかった見込み客をすべて拾って、新規顧客として制約数につなげていく仕組みが今後の売り上げ拡大に向けて必須」と感じていたという。

システム面でも課題があった。ネックとなっていたのは見込み客管理の手法。おかんでは新規や既存顧客の管理を、すべてグーグルのスプレッドシートで行っていた。スプレッドシートは「名前」「メールアドレス」や「見込み客へのアクション」など16項目で管理していた。しかし、それだけでは十分とはいえず「見込み客に、どのタイミングで電話をかけ、いつメールを送るべきかなどの動向を把握することができなかった」(塩野さん)という。

管理データの保存も懸念点があった。おかんでは2013年からサービス開始以来、顧客が順調に増えているという。そのため「近い将来には増える顧客をスプレッドシートで管理し蓄積するには限界がくる」(塩野さん)という危惧を持っていた。こうしたことから見込み客の動向を把握し管理・蓄積する効率的な仕組みの構築が急務となっていた。

MA導入で改めて自分たちがターゲットにする顧客像を再認識

そこで解決策として目をつけたのがマーケティングオートメーション(MA)だった。MAは見込み顧客や既存顧客に対する、それぞれのアクションを自動的に記録するシステム。この仕組みを活用することで「インバウンドで来た見込み客の漏れがないようにする」(同)ことを目指した。

MA導入に向けては、2016年5月にベンダーの選定に本格的に着手。「価格」「メール一斉送信が可能」「トラッキングタグ付与が可能」「オン・オフラインで作業が可能」「資料のダウンロードが可能」という項目を選定条件に設定した。また、データ保存の拡張性も重視した。

条件に合致したベンダーは3社。検討の結果、シャノン(東京・港)のマーケティング自動化・データ管理クラウドサービス「マーケティングプラットフォーム」に決定した。機能的な条件では各社ともに合格していたが「望んでいる価格的な問題をクリアしていた」(同)のが決め手になったという。

おかんが導入したMAのリード管理画面

おかんが導入したMAのリード管理画面

実際の導入にあたっては、データ整備に苦労した。おかんではMAシステムの稼働日を2016年9月1日に設定。この日に向けて2016年7月半ばから入力項目など顧客データの整理を開始し、1か月半の間ひたすら旧データ1500件の精査を行った。

データの精査では「データ項目の設定が一番大変だった」と塩野さんは振り返る。データの項目はある程度の想定をして決めていくが、動作を確認するとシステムが動かないことも多かった。塩野さんはその度に精査をやり直した。こうした苦労のかいもあって、顧客情報は、30項目と導入前のほぼ倍となり「最適なタイミングでアプローチできるようになった」(同)という。

一方、MAは、リード管理、メール配信などを自動で行うことはできるが、そのためにはターゲットとする顧客像を自ら設定しなければならない。しかし、「システムの導入は決めたものの、誰に対して何をしたらよいか、ターゲティングすらできていなかった」(同)というのが現状だった。

獲得すべき顧客像が明確であれば、見込み客の獲得も格段に容易となり、制約率もアップする。そこで、塩野さんはマーケティング部門の5人とチームを組み、サービスに関心を持つ人について、ミーティングを繰り返し、人物像を徹底的に分析した。

こうして「アプリ開発会社の総務を行う、33歳のなつこさん。独身。なつこさんが勤めている会社はベンチャー企業で社長は38歳」というターゲット像を導き出した。社長の人物像まで設定したのは「当社のサービスを利用する会社は小規模で、社長の意見で決まることも多い」(同)のが理由だという。

データ精査とターゲットの設定を経て導入したMAは9月には計画通りに稼働。運用開始して1か月ほどでリード数が約2000に増加。6件の成約につながった。「予想以上の効果があった」と塩野さんは話す。システム面では見込み客のサイト上での行動をリアルタイムで把握できる「トラッキング」という機能、運用面ではデータ精査の経験を元にした見込み客の行動予測がリードの精度向上につながったことが主な理由と塩野さんは分析している。

おかんが導入したMAのアクション管理画面

おかんが導入したMAのアクション管理画面

インバウンドの集客を自動で行えるようになったことで、社内の業務にも余裕が生まれた。これを受け、おかんは販売協力パートナー代理店の活用、コールセンターを利用したアウトバウンド(外部への営業活動)による集客にも着手した。現在は顧客の2割をアウトバウンドで獲得している。

沢木恵太・おかん代表取締役CEO

沢木恵太・おかん代表取締役CEO

ベンチャーの情シスは常に利益を考える経営的な視点が不可欠

沢木恵太・代表取締役CEOは「ベンチャーが成長していくためには労働力をシステムに置き換えることで労働集約型から脱却することが必要。そのためにITは有効。しかし業務効率化のツールでしかない。いかにコストをかけずに利益へとつなげるが重要になる」と話す。この点で、今回の塩野さんの取り組みは、その言葉を実践した例といえる。

また、最小限の人数で事業を回すベンチャーの情シスには「システムの専門家ではなく、経営の能力が必要」と強調する。限られた人員の中で、改善点を分析し、対策を立て、最適なシステムを導入し、利益を上げるという経営的な視点が不可欠という。

おかんはMAを導入したことで、見込み客の管理業務の精度を大幅に向上させた。同時に「自分たちがターゲットにすべき顧客像」という、これまで見過ごしていた課題に気付くこともできた。その結果、「ベンチャーに必要な気付きを得て解決・改善し、成長するサイクルがようやく回り出した」と沢木社長は説明する。

今後は、導入したMAを核に、見込み客と成約済みの顧客、商品発送管理データを連携させて一括したデータ管理を行っていきたい考えだ。「システムを活用することで、もっと業務を効率化することができる」と塩野さんは意気込んでいる。

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