ひとり情シスの功罪

「重労働」「休みがとれない」などネガティブな印象を与える「ひとり情シス」という言葉ですが、日本の会社の99%を占める中小企業ではゼロ情シスがあたりまえ、例え一人であってもIT専任要員がいるなら真面目に取り組んでいる会社ではないかという意見も聞かれます。

一人だからこそノビノビとできていた仕事が、新たに上司ができたことでこれまでになかった業務が増え、作業効率が落ちたという声も耳にしますが、その一方で、今のご時世、業務が属人化しないような取り組みも会社から求められることも確か。
このように一言では善悪を語れない”ひとり情シス”について考えます。

 

【おさらい】ひとり情シスとは?

「ひとり情シス」とは、一人で社内すべてのIT関連業務をカバーしていることを指します。情シスの仕事は企業規模が異なっても仕事はほとんど変わりません。パソコンのキッティングから社内のネットワーク環境構築、業務ツール検討/導入、社内システムの企画/構築など、ITに関連するあらゆる仕事を一人でカバーしているのが、”ひとり情シス”なのです。


この言葉は、日本の製造業が海外に進出するようになって生まれたという説もあります。本業ではないIT業務に対して日本から多くの人数を派遣できないため、担当者は幅広い業務に対応せざるをえませんでした。たったひとりで業務をこなす孤独感から自虐的に「ひとり情シス」と自らを呼んだとされています。
少人数の社員しかいない企業においては、IT担当者がひとりしかいないのも当然といえるのですが、比較的規模の大きい中堅企業においてもひとり情シスが増えています。
デルとEMCジャパンが2018年1月に発表した「中堅企業IT投資動向調査」によると、中堅企業のうち情シスの担当者が1人以下と回答したのは31%。昨年の27%から4ポイント増加しています。また、48%の企業が従業員を増やす予定なのに対し、IT人材を増やす予定のある企業は15%にとどまりました。このように、ITを専門とする人員数は中堅企業においてさえ減少傾向にあるのです。


<出典:https://japan.emc.com/about/news/press/japan/2018/20180130-1.htm

 

【変わる役割】ひとり情シスが増えるワケ

ひとり情シスが増えるのは、以下の理由が考えられます。

(1)情報システム自体のアウトソーシングが進んでいる

今まで企業は情報システムを自社で構築していましたが、クラウドサービスを利用することが増えました。そのため今まで情シスが担ってきたシステム監視やハードウエア障がいの対応、法改正により発生するプログラムの改修もアウトソースできるようになり、少数のIT人材で運営できる環境になりつつあります。

(2)経営層がITを軽視している

情報システム部門は、経営層からは単なるコストセンターとみなされてしまうことが多いのも事実です。欧米ではIT部門の役割に理解があり、CTO(最高技術責任者)やCIO(最高情報責任者)を配置してITを戦略的に活用する企業が多いのですが、日本ではそのような役割のポジションがない企業も数多く存在します。そのような背景もあり、特に人手不足の昨今においては、情シスの人員を減らし、営業部門等に人員を割く、または総務部門等のバックオフィス部門と兼任にする傾向にあります。

 

【メリット/デメリット】ひとり情シスの問題点/良い点

ひとり情シスというと、ネガティブなイメージが強いのではないでしょうか。ひとり情シスが抱える問題には次のようなことがあります。

・便利屋扱いされる

よくあるのが「ITのことなら〇〇さん」ということで、Excelの使い方やスマートフォンの使い方、プリンタの紙詰まりまで、あらゆるサポート依頼が集中します。時には自宅の通信回線の設定といった筋違いなサポートまで依頼されることもあります。仕事を代わってくれる人もいないので、休みをとることもままなりません。

・仲間と切磋琢磨できない

同じ仕事をしている仲間同士で知識を共有したり、切磋琢磨したりできる環境になく、成長に限界を感じることもあります。「グチを言い合えるのが良い職場環境」と言われるように、同じ境遇の仲間と悩みを分かち合うガス抜きもひとり情シスではできません。仲間が欲しいために、エンジニアが多く在籍する会社に転職する現象も多くみられます。

・相談できる人がいない

どのようにすれば正解なのかなど、自分自身で答えを出すことができない場面に遭遇することもあるでしょう。セキュリティ対策やPC設定のポリシーなど、情シスがリーダーシップを持って決定し、全社に徹底させる事項は多岐にわたります。

 

一方で、一人情シスにもメリットはあります。

・改革・チャレンジに取り組みやすい

大枠での社内合意は必要でしょうが、チーム内での意見のすり合わせが不要となるので、「まずはやってみる」というような自分が思う通りにプロジェクトを進められるメリットがあります。経営層と密な関係を構築していれば、”攻めの情シス”への道も開けるでしょう。

・広い範囲で経験を積める

情シスの人数が多いと分業制となり、担当する役割が狭くなりますが、ひとり情シスなら広い範囲を経験でき、技術を磨けます。

 

【対策】ひとり情シス、どうするべき?

単なるコストセンターと軽視されがちだった情報システム部門ですが、最近では求められる役割も変化しています。
「攻めの情シス」という言葉が聞かれるように、システム運用保守やヘルプデスクの役割から業務改善やイノベーションの創出にシフトするべきという考えが広まっているのです。


しかし、ひとり情シスともなると、勤務時間の大半を他部門からの頼まれごとや定型業務に費やしているのではないでしょうか。
ひとり情シスでも過酷な労働から解放され、戦略性のある仕事をするためには以下のような対策が必要です。

・企業外にネットワークを作る

ひとり情シスだからこそ、他企業の情シスの方と積極的に情報交換する必要があります。他社ではどうやっているかを知ることで自社の運用のヒントになり、最新技術動向の情報も仕入れることができます。何度か取材を行ったPCNWは「日頃から社内のシステム管理に悩みを抱えている情報システム管理者の方を対象とした情報収集・意見交換の集い」であり、このような活動に参加することもその一つである。

・アウトソースや自動化で作業量を削減する

ひとり情シスがやりがいある仕事に集中するためには、ルーティンワークをいかに少なくするかにかかっています。クラウドサービスを上手に活用し、例えばヘルプデスク業務はチャットボットを導入するなど、必要に応じて自動化やアウトソースを行うことで戦略的な仕事に時間を割くことができます。

・サポートのコストを明確化する

パソコンのちょっとした困りごとにすぐ対応してくれる情シスは貴重な存在です。しかしただの便利屋とみなされたくありません。そこでサポートに使った時間を部門ごとにコストとして積み上げ、見える化しておきましょう。サポートにどのくらいコストがかかっているのかを共有することができます。見える化したコストを部門から実際に徴収するのもひとつの案です。部門の利益が減るとなれば、なるべく部内で解決する動きにもつながります。
また人を増やしたい場合やサポートをアウトソースしたい場合に経営層を納得させる材料になります。

・事業部門との連携を密にする

情シスをコストセンターでなく、戦略部門として位置付けるためには、事業部門との密接な連携が不可欠です。しかし、例えばある部門で非効率的な作業をしているとしても、実際に業務を担当している人はそれが当たり前と考えているケースも多く、打ち合わせを開催して問題点を聞いても明確に上がってこないことがほとんどです。そのため、日常的に交流してどんな業務をやっているか、情報を収集すると業務改善のヒントを得やすくなります。情報システム部門はフロアの隅に席があることが多いですが、オフィスの真ん中に席を設けると自然と人が通ってコミュニケーションしやすくなります。

 

【まとめ】情報システムを戦略化せよ!

「デジタルトランスフォーメーション」がバズワードになっているように、企業経営はもはやITなくして語ることはできません。競争力を高めるために、戦略的にITを活用できる人材が必要とされています。
ひとり情シスの機動力を活かし、いかに事業部門密接な関係を構築していけるかが、事業の発展と情報システム部門の業務改善のカギとなるのではないでしょうか。

 

【執筆:編集Gp 山際 貴子】

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