2019年 中堅・中小企業におけるIT活用の注目ポイント(業務システム編)-ノークリサーチ調査

ノークリサーチは、2019年の中堅・中小企業におけるIT活用の注目ポイントのうち、基幹系、情報系、運用管理系といった業務システムに関する今後の見解を発表した。

■2019年は基幹系、情報系、運用管理系のいずれにおいても、今後の「大きな節目」となる

ノークリサーチでは毎年、ERP、会計管理、生産管理、販売・仕入・在庫管理、給与・人事・勤怠・就業管理、ワークフロー、グループウェア、CRM、BI・帳票、文書管理・オンラインストレージサービスの10分野に渡る業務システムの導入社数シェアとユーザ企業による評価、およびセキュリティ/運用管理/バックアップといった守りのIT活用に関する調査/分析を行っている。
2019年の中堅・中小企業における業務システム活用は、基幹系、情報系、運用管理系のいずれにおいても「大きな節目」になると予想される。まず、会計や販売などの基幹系では消費税率10%改正と軽減税率導入が予定されている。だが、4月の統一地方選および7月の参院選に向けた国内の政局や、米中貿易戦争や英国のEU離脱の行方といった世界経済の影響によっては、政府が3度目の延期を選択する可能性もある。だが、これ以外にもユーザ企業の経営層から見た時に「避けることが得策ではないIT活用」に関連するトピックが幾つかある。例えば、日本IBMは銀行や会計ソフトウェアベンダと協調し、「会計データ・オン・クラウドプラットフォーム」を2020年から提供予定と発表している。同サービスを利用することで金融機関への財務/会計データ提供が円滑となるため、融資を求める中小企業や小規模企業による会計データ処理のデジタル化が進む可能性がある。また、日本政策金融公庫は2019年度から雇用創出や働き方改革に関する融資の際に、従業員の社会保険への加入を条件とすることを決めた。小規模企業における社会保険の加入逃れを減らすことが目的だが、これによって小規模企業における人事労務支援サービスの新規導入が増える可能性も考えられる。また、グループウェアやワークフローといった情報系では「役割の拡大」が注目すべき変化となる。さらに、セキュリティなどの運用管理系ではパッケージからクラウドサービスやアウトソーシングへのシステム形態における遷移や、「守りのIT支出」を増加させる直接要因(GDPRなど)と間接要因(働き方改革など)のどちらの影響が強いか?の見極めが重要となってくる。次頁以降では基幹系、情報系、運用管理系のそれぞれについて、調査データを交えながら下図に整理した注目ポイントの詳細について見ていくことにする。

■基幹系では「顧客対応改善」や「高度なデータ分析」で求められるデータ連携整備も大切

前述のように、2019年の基幹系システム活用では中堅・中小企業(特に中小企業や小規模企業)にとって、「経営判断として避けることが得策でないシステム導入/更新」に関する事由が予想される。だが、IT企業としては「強制力を伴うIT活用」以外の施策についても並行して練っておくことが大切だ。その中で有望と考えられるのが、顧客対応改善や高度なデータ分析に伴って必要となる基幹系システムの整備である。
以下のグラフはCRM(SFAおよびMAを含む)を導入済みの中堅・中小企業(年商500億円未満)に対して、「現状の課題」を尋ねた結果の一部を2017年と2018年で比較したものだ。

上記のグラフを見ると、Webマーケティングの課題(「Webサイトのアクセス分析やページ最適化ができない」)や、O2Oの課題(「店舗とオンラインを横断した顧客管理ができない」)が増えている一方、基幹系システムとCRMとの連携課題は解消しつつあるように見える。だがWebマーケティングやO2Oで十分な成果を挙げようとすれば、売上分析や在庫管理も効率化する必要がある。つまり、現在の状況は「基幹系とCRMの基本的な連携はカバーできているが、WebマーケティングやO2Oの課題解消の取り組むが進むにつれて、再び基幹系システム側にも改善が求められてくる」といった状況と考えられる。
さらに、以下のグラフはBI・帳票を導入済みの中堅・中小企業(年商500億円未満)に対して、「今後のニーズ」を尋ねた結果の一部を2017年と2018年で比較したものだ。昨今では中堅・中小企業向けのBI・帳票ツールにおいても、DWHの構築が要らず現場部門で手軽に利用できるものが増えてきた。選択肢の1番目と2番目を見てもデータ分析における基本的なニーズは既に満たされつつあることがわかる。今後は選択肢の3番目や4番目が示すように、更に動的かつインタラクティブなデータ分析が求められると予想される。ただし、「ストーリー仕立て」や「動的な表現」によって理解しやすいアウトプットとなることで、結果を参照する相手も増えてくる。そのため、ユーザ企業の社内外では「こんなデータも加味したらどうか?」といった指摘も多くなり、基幹系システムから更に柔軟にデータを抽出できる仕組みが求められてくる可能性がある。

このように2019年以降の基幹系システムでは、基本的なデータ連携ニーズが満たされた次のステップとして、「顧客対応改善」や「高度なデータ分析」に伴う更にもう一段階上のデータ連携ニーズが生じると予想される。こうしたニーズにいち早く対応するためにも、IT企業側としては「基幹系システムにおけるデータ連携面の整備」といった、地味であるが重要な取り組みを進めておことが重要となってくる。

■情報系は「コラボレーション基盤」や「業務フロー基盤」への役割拡大が重要な商機となる

続いて、情報系システムについて見ていくことにする。
以下のグラフはグループウェアを導入済みの中堅・中小企業(年商500億円未満)に対して、「評価/満足している機能や特徴」を尋ねた結果の一部を2017年と2018年で比較したものだ。情報系システムの中でも、グループウェアは既に多くのユーザ企業が導入しており、スケジューラなどの基本機能はこの数年で大きく変わっていない。
こうした場合、ユーザ企業における評価では一般的に価格面の比重が大きくなりがちだ。だが、以下のグラフが示すように、価格に関する項目よりも「独自のアプリケーションをユーザが自分で作成できる」や「社外(顧客や取引先)との情報共有も行える」といった項目の回答割合の方が高くなっていることがわかる。このように、グループウェアは単に社内のスケジュール共有を行うだけでなく、独自アプリケーションを作成したり、社外との情報共有を担うなどといった「コラボレーション基盤」へと、その役割を拡大しつつある。
「コラボレーション基盤」を担う候補としては、IT企業や先進的なユーザ企業での導入が目立つ「Slack」などの新たな選択肢もある。だが、中堅・中小企業にとっては利用する側のITスキルという観点から、新たなツールの導入が負担となることも少なくない。そのため、ほぼ全ての従業員が日々利用しているグループウェアを「コラボレーション基盤」とすることは中堅・中小企業の実情に即したアプローチの一つとも言える。

さらに、以下のグラフはワークフローを導入済みの中堅・中小企業(年商500億円未満)に対し、「今後のニーズ」を尋ねた結果の一部を2017年と2018年で比較したものだ。情報系システムは早期からクラウド(SaaS)移行が進んだ分野でもある。昨今ではワークフローにおいてもクラウド形態を選択するケースが見られるようになってきた。だが、以下のグラフが示すように、今後のニーズとしてはクラウドとの併用/連携に関する項目よりも、「複数システムを連結して処理を自動化できる」や「データから処理内容を自動で判断できる」といった項目の回答割合の方が高くなっている。つまり、ワークフローには従来の「承認/申請ツール」としての役割に加えて、複数の処理やデータを連結して実行する「業務フロー基盤」としての役割も今後は求められていく可能性がある。

このように、グループウェアとワークフローのいずれにおいても「役割の拡大」という変化が起きつつある。DX時代に向けた迅速なビジネス展開が求められている状況を踏まえると、今後もこうした変化が続くと予想される。IT企業としては従来のグループウェアやワークフローの枠組みにとらわれず、「コラボレーション基盤」や「業務フロー基盤」と捉えた時、どのような機能や特徴が必要となるか?という視点で今後の製品/サービス強化を検討していくことが重要となってくる。

■運用管理系における付加価値提供は「パッケージの減少とクラウドの増加」に影響される

基幹系システムや情報系システムだけでなく、セキュリティ/運用管理/バックアップといった運用管理系においても留意しておくべき変化がある。以下のグラフは中堅・中小企業(年商500億円未満)に対し、「PCのセキュリティ対策」における実施手段を尋ねた結果を2017年と2018年で比較したものだ。「PCのセキュリティ対策」については既に多くの中堅・中小企業が何らかの対策を講じており、全くの新規導入を見込める余地はそれほど大きくない。

だが、グラフが示すように、システム形態については「パッケージ」が減少し、「クラウドサービス」と「アウトソーシング」が増加するといった変化が見られる。こうした変化はIT企業が更なる付加価値を提供する際にも大きく影響してくる。例えば、標的型攻撃の訓練サービス(「模擬的に標的型攻撃メールを従業員に送る」など)をオプションとして追加しようとした時は、「全社に模擬メールを一斉配信すると業務に支障があるので、幾つかのグループに分けて実施したい」といったニーズが出てくる可能性もある。こうした場合にはアカウント情報が分散しやすい「パッケージ」よりも「クラウドサービス」や「アウトソース」の方が対応しやすい面がある。このように、IT企業側としては運用管理系システムにおけるシステム形態の変化を「今後の付加価値提供の自由度」という観点からも見定めていくことが大切だ。

さらに、以下のグラフは中堅・中小企業(年商500億円未満)に対して、「セキュリティ/運用管理/バックアップといった守りのIT支出を増加させる要因」を尋ねた結果の中から、代表的な項目における回答割合をプロットしたものである。

守りのIT支出の増加要因にはユーザ企業に対してセキュリティ対策の強化を求める「GDPR(EU一般データ保護規則)」や「改正個人情報保護法」のような直接的な要因と「働き方改革に伴うモバイルワーク推進」「働き方改革に伴うテレワーク推進」「消費税率10%改正と軽減税率」などのようにある取り組みに伴ってセキュリティ対策も必要となる間接的な要因がある。以下のグラフが示すように直接的な要因よりも間接的な要因の方が回答割合は高い。これは、GDPRや改正個人情報保護法の適用対象となる業態が限られることが大きな要因の一つだ。だが、GDPRによって個人情報保護の意識が高まりつつある欧州やGAFAによるデータ管理に反発する動きが見られる米国などと比べると、日本は個人情報保護に関する社会的な議論がそれほど活発になっていない。一方では、個人情報を収集/活用する技術は日々進歩している。

直接的な要因に伴う中堅・中小企業のIT支出負担がそれほど大きくない現状はユーザ企業の経営視点では好ましいかも知れないが、社会全体のセキュリティ意識を高めるという点では諸外国と比べて遅れをとってしまう恐れもある。
IT企業のみならず、行政も含めた形で個人情報保護やセキュリティ対策の意識を社会全体で高めていく取り組みが必要と考えられる。


2018年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート
ERP/ 会計/ 生産/ 販売/ 人給/ ワークフロー/ グループウェア/ CRM/ BI・帳票など10分野の導入社数シェアとユーザによる評価を網羅
【レポートの概要と案内】http://www.norkresearch.co.jp/pdf/2018itapp_rep.pdf

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