2019年 中堅・中小企業におけるIT活用の注目ポイント(ソリューション編)-ノークリサーチ調査

ノークリサーチは、2019年の中堅・中小企業におけるIT活用の注目ポイントのうち、基幹系、情報系、運用管理系といった業務システムに関する今後の見解を発表。
2019年も「IoT」と「働き方改革」は最も重要な分野だが、従来とは異なるアプローチが必要と予測する。

■IoTは「ユーザ企業」と「ヒト」への着目、働き方改革は「RPA」と「HR Tech」の両立が重要

昨年、ノークリサーチではDX時代を見据えた40項目に渡るソリューション(IT活用場面)の投資意向や投資金額を網羅した調査と分析を行った。(結果の詳細を掲載した調査レポートについては本リリース末尾を参照)
ソリューション視点で中堅・中小企業のIT活用を見た場合、2019年も引き続き注目すべき領域の筆頭として挙げられるのが、「IoT」と「働き方改革」だ。
まず着目すべきなのは「IoT」で起きている変化である。「スマート工場」や「スマート農業」はIoTの代表的な活用ケースだが、従来はIT企業がセンサ設置やデータ分析を担い、データ収集の過程ではユーザ企業側の「ヒト」が介在しない形態も少なくなかった。しかし、昨今では「カメラを用いた工場内の動線分析に加えて、音声認識によるヒトからの情報伝達も行う」などの取り組みをユーザ企業が主導するケースも目立つ。これは、下図が示すように「機器to 機器」のデータ連携に「機器withヒト」のデータ活用が加わり、「IT企業主導」だけでなく「ユーザ企業主導」へと拡大していると捉えることができる。
IT企業としては、こうした変化を踏まえた上でユーザ企業と共創する形でIoT活用提案を模索していくことが重要となる。

一方「働き方改革」においては「業務の自動化」と「人材の活性化」のバランスが大切となる。長時間労働の是正では無駄な手作業を自動化する(=「プロセス指向」で「ヒトの代替」を図る)ことが求められる。だが、中堅・中小企業は大企業と比べて人員数や業務量が少ないため、「業務の自動化」だけでは労働時間削減の効果が限られてくる。さらに、有能な人材を確保/維持するためにはモチベーション向上などの取り組みも不可欠だ。そのため「人材データベースを活用して従業員間の交流を図り、業務効率化と職場改善を進める」などのような「人材の活性化」(=「データ指向」で「ヒトの支援」を図る)も必要だ。
したがって、下図が示すように「RPAに代表される業務の自動化」と「HR Techに代表される人材の活性化」は「働き方改革」におけるIT活用の両輪であり、個々のユーザ企業に適したバランスを見出すことがIT企業の重要な役割となってくる。
下図の背景となる調査データや今後の取り組みにおいて参考となる具体例などについては後述する。

■「ユーザ企業のSIer化」を直視し、「機器with ヒト」のデータ連携を訴求できるか?がカギ

以下のグラフは「生産管理」製品/サービスを導入している中堅・中小企業に今後のニーズを尋ねた結果のうち、IoTに関連する項目の結果を年商別に集計したものだ。選択肢には「原価管理を目的としたIoT連携」と「工程管理を目的としたIoT連携」の2つがあるが、「どちらの回答割合が高いか?」は年商規模によって異なり、共通した傾向は見られない。こうした結果を踏まえると、生産管理におけるIoT活用提案では既存の機能分類にとらわれ過ぎないことが大切だ。
例えば、『金型に取り付けた耐熱バーコードを読み取り、作業所要時間の計測や製造数をカウントする』といった取り組みを行った時、これが「原価管理を目的としたIoT連携」と「工程管理を目的としたIoT連携」のどちらに該当するのか?はユーザ企業が抱えている課題によって異なってくる。
人的作業も含めたコスト算出に課題を抱えている場合は前者となり、納期遅延の原因特定が重要である場合には後者となる。

IT企業側はこうした場面で既存の機能分類に固執してしまいやすいので注意が必要だ。一方で、ユーザ企業は簡易な仕組みで高い効果を得るIoT活用を始めている。
生産ラインの稼動状況を把握する手段として、安価な磁気センサを活用した旭鉄工(http://www.asahi-tekko.co.jp/)やスマートフォンの加速度センサを用いた武州工業(http://www.busyu.co.jp/)などが代表例だ。
いずれも自社で培ったIoT活用のノウハウを他の製造業に提供している。つまり、前頁の図に示した「ユーザ企業のSIer化」は大企業よりも中堅・中小企業において盛んになる可能性がある。
IT企業側は「ユーザ企業による簡易な仕組み」であるからといって、こうした動きを軽視すべきではない。こうした取り組みが拡大/進歩し、高度なデータ分析が必要になった段階に備えてIT企業側には中長期的な視点でユーザ企業との共創関係を築く取り組みが求められてくる。

さらに以下のグラフは「現場作業の効率化」におけるIoT関連ソリューションの導入意向を尋ねた結果を年商別に集計したものだ。年商5億円未満の小規模企業層を除けば、「センサを用いた従業員の作業動線分析」や「ウェアラブル端末を用いた作業情報共有」の導入意向は2~3割に達していることがわかる。昨今の動きで注目すべきなのは、ヒトが介在しないM2Mだけでなく、「ヒトも加味したデータ連携」の取り組みが見られる点だ。例えば、パナソニック佐賀工場ではカメラを用いた作業動線分析に加えて、設備の点検結果を音声で伝達する仕組みも活用している。収集した音声を分析すれば、作業動線だけでなく従業員の健康状態も把握するなどの応用も可能になると考えられる。

またアウトソーシングテクノロジーの「AR匠」(https://solutions.ostechnology.co.jp/artakumi)のように、ヘッドセットを介して現場の若手と遠隔地の熟練者が画面を共有し、技術継承に役立てるといった活用提案も見られる。このように、現場作業のIoT活用では「機器to機器」のデータ連携だけでなく、適度にヒトを介在させる「機器with ヒト」のデータ連携も有効だ。人員の育成やスキル継承が課題となっている中堅・中小企業においては、上記の例に述べたような「機器with ヒト」がもたらすメリットが提案内容に含まれているかどうか?によって、IoT活用意向も大きく変わってくると考えられる。

このように、2019年のIoT活用では「ユーザ企業のSIer化」と「ヒトも加味したデータ連携」の2つの変化を踏まえた提案内容へとブラッシュアップできるかどうか?がIT企業側における今後の成否を大きく左右すると予想される。

■RPA活用提案ではBIや帳票における経験が役立つ、HR Tech訴求は遅れの挽回が急務

続いて、「働き方改革」の今後について見ていくことにする。冒頭でも述べたように今後は「業務の自動化(RPA)」と「人材の活性化(HR Tech)」を両輪としてバランス良く訴求していくことが重要となる。
下図は中堅・中小企業における「RPA」の全体像を整理したものだ。現時点のRPAソリューションは、専用のRPAソフトウェアによる「ルールに基づく自動化」が主体であり、一部の先進的な取り組みにおいて「認識/推論を伴う自動化」が見られる状況となっている。

だが、中堅・中小企業においては「専用のRPAソフトウェア」をどの業務場面に適用すれば良いか?の判断が難しく、またRPAソフトウェア自体の管理/運用も負担となりやすい。そこで今後注目すべき動きが、上図において「部分的な自動化」と記載した領域である。
「販売データをグラフ化してPDFに整形する」などのように、ERPを始めとする基幹系業務システムにおいても「繰り返し行う単純作業だが、自動化されていない業務」が少なからず存在する。専用のRPAソフトウェアが持つ機能の一部を基幹系業務システムが備えることで、こうした課題を解消しようとする取り組みが「部分的な自動化」である。これは帳票やBIのアプリケーションが基幹系業務システムのオプションとして提供され、中堅・中小市場に浸透していった過程と類似している。IT企業としては、帳票やBIを提案した時のノウハウを「部分的な自動化」によるRPA活用提案にも活かしていくことが有効と考えられる。

一方、以下のグラフは「人材の活性化」における「HR Tech」関連ソリューションの導入意向を尋ねた結果を年商別に集計したものだ。
中堅・中小企業にとっての「HR Tech」とは、AIを駆使した高度なタレントマネジメントなどではなく、選択肢に記載された「人材データベースの有効活用」や「動画を用いたノウハウの共有」などの比較的シンプルなサービス活用を指す。

前者の例ではカオナビの「カオナビ(人材データベース)」(https://www.kaonavi.jp/)、後者の例ではTANRENのナレッジシェアアプリ「TANREN」(https://tanren.jp/)などが挙げられる。いずれの選択肢も年商5億円未満の小規模企業を除けば、導入意向は2~3割に達する。この結果からも、中堅・中小企業が「人材の活性化」を支援する仕組みを必要としていることが確認できる。

頭でも述べたように、中堅・中小企業における「働き方改革」を成功させるためには業務内容に着目した「プロセス指向」による自動化で「ヒトを代替」する取り組みだけでなく、人材情報やノウハウを蓄積/共有する「データ指向」によって人材の活性化を図る「ヒトの支援」が不可欠だ。
2018年はRPAベンダの訴求によって前者に注目が集まったが、2019年はIT企業が後者にも着目することによって両者のバランスをとることが重要となってくる。


2018年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート
ERP/ 会計/ 生産/ 販売/ 人給/ ワークフロー/ グループウェア/ CRM/ BI・帳票など10分野の導入社数シェアとユーザによる評価を網羅
【レポートの概要と案内】http://www.norkresearch.co.jp/pdf/2018itapp_rep.pdf

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