マイナンバー制度のプライバシーに対する誤解と錯覚/ジョーシス

  • 2015/11/12
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2015/11/12

一部の弁護士・学者の「マイナンバー違憲訴訟」?

マイナンバーセキュリティのイメージ画像

 831日早朝のNHKのニュースを聞いて、「またか」とがっかりさせられました。

住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)実施時にも、「住基ネットはプライバシーを侵す憲法違反の制度」として、ごく一部の地方自治体などがサーバーの住基ネットへの接続拒否などを行い、各地で訴訟が起こされましたが、最高裁ではすべて退けられて、今日、なんのプライバシー侵害の事象もなく、10数年の歴史を重ねています。十分な知識をもたず、過剰に被害意識をもつ「専門家」と称する人やそれに油を注ぐテレビ番組のコメンテーターなどが、誤解と錯覚に基づいて「プライバシー侵害」を大声で主張するので、普通の人は、「プライバシーが侵害されるのではないか」と錯覚してしまいます。

プライバシーについては、大きな認識違いがあります。いろいろな説明がされていますが、一般の理解で分かりやすく言えば、「人に知られたくない個人情報」ということです。プライバシーを守る権利とは、「人に知られたくないことを知られない権利」ということになりますが、これは無条件の絶対的な人権ではありません。「公序良俗に反しない限り」という前提条件があるのです。

マイナンバー制度の目標の1つとして掲げている「税と社会保障の公平性」というのは、一言でいうと、脱税をさせない、受給資格のない人の不正な申告をさせない、ということです。所得を隠して税逃れをしている人にとって個人の所得内容は「人に知られたくないプライバシー」です。所得を隠して不正に社会保障の各種手当を申請する人にとって個人の所得内容は「人に知られたくないプライバシー」なのです。プライバシーであるのは間違いありませんが、守るべきプライバシーではないということです。

住基ネットの訴訟では、住所、氏名、生年月日、性別の基本4情報は一般的には守るべきプライバシーには当たらず、行政の必要上、これを利用することはなんら違憲性はないと認定されましたが、もっともなことです。

納税の公平性、社会保障の受益の公平性を実現するため、行政上の必要性からマイナンバーを通じて正確な所得の把握が行われることは、不正な行為をしている人にとっては「人に知られたくない」プライバシーを侵される「脅威」に違いありません。これもプライバシーには違いないからです。

宗教や思想・信条の自由を守ることはプライバシーの根幹ですが、税や社会保障に関する個人データ、あるいは、今後、民間にも開放されることになったとしても、その個人データは宗教や思想・信条の自由を侵すものと直接には関係のないものばかりです。

税金や社会保障関連で不正を行っている人はマイナンバーにはいろいろな理由をつけて反対する動機があります。制度を十分に理解していない一部の弁護士や有識者の方々が、社会の公平性を阻害している、こういう社会的不正を隠す「プライバシー保護」に加担しないことを願うばかりです。

情報の自己コントロール権

マイナンバー制度に対して十分に理解されていないことの1つが、情報の「自己コントロール権」です。プライバシーの議論の中で問題にされるのが「個人情報の国家による一元管理の危険」ですが、個人のデータは多数のデータベースで個別にばらばらに分散され、比較参照する時には情報提供ネットワークセンターを仲介にして、業務処理をする資格をもつことを証明した人だけが、目的を明確にして、複数のデータを呼び出して突合し、行政業務の資料にするので、「一元管理」「情報の統合状態」にはならない、というのが実態なのです。

 一部の有識者が「危険」と主張するのは誤解です。

それとともに、情報提供ネットワークセンターでは、行政職員が行う、業務に必要なデータの突合作業を機械的に処理をします。その処理過程はすべて機械的に記録されます。

マイナ・ポータルが動き始めると、国民(日本に居住する外国人も含む)は、マイナンバーカードを利用してマイナ・ポータルを呼び出し、自分のデータがだれによってアクセスされ、どのような業務に使われたかを知ることができます。その内容が不適切だと思えば、苦情窓口にクレームを申請し、作業に対して注文することができるのです。

これまで、国民は自分の情報がどのように政府に使用されているか、知ることができませんでした。だから、クレームや注文を付けることもできなかったのです。しかし、マイナンバー制度によって、自分の情報がどのように閲覧され、利用されるのかを知って、これに注文を付ける仕組みが可能になりました。「情報の自己コントロール権」確立への大きな一歩なのです。

「プライバシー権」についてはいろいろな角度から説明がされるますが、有力な説の1つが「情報の自己コントロール権」を保証すること、とするものです。しかし、実際問題として自分の情報の所在を知ることもできなければ、さらに、どのように使われているかを知ることもできません。その情報の正誤を確認し、訂正を要求することもできないのが現実です。マイナンバー制度では、このうち、行政が持つデータについては自分で確認し、利用されている状況を把握できるように、一歩前進させるわけです。

「プライバシー権の侵害」どころか、事実上、難しいと思われる「自己コントロール権」の実現へ前進させるのが、マイナンバー制度であるのです。

情報社会では、個人情報を保管しているのは行政だけではなく、むしろ、民間の方が膨大な情報を収集し、扱っています。マイナンバー利用を民間にまで広げて、情報がどのように利用されているのか、その情報に間違いがないか、自分でコントロールできるようにするのが「プライバシー権」の内容をさらに向上させる道ではないでしょうか。

マイナンバーはそうした方向を目指した重要なインフラなのです。

中島 洋
1947年生まれ。東京大学大学院修了。73年日本経済新聞社入社、88年から編集委員。日経コンピュータ、日経パソコンの創刊にも参加。慶応義塾大学教授や日経BP社編集委員などを経て現在、株式会社MM総研代表取締役所長。日本個人情報管理協会理事長など多くの肩書を持つ。

 

所属:株式会社MM総研

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