工藤伸治のセキュリティ事件簿番外編 著者 一田和樹インタビュー

  • 2015/12/18
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2015/12/18

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「情シスは技術より人の側面の方が大きい」 作家 一田 和樹 氏

「箱崎早希と超可能犯罪」は、組織や人のありかたにフォーカスした

――登場人物としてはともかく、情シスが主人公になる小説、しかもミステリーは、これまでほとんど存在しなかったと思います。物語を作るうえで苦労はありましたか。

私の場合、物語の舞台が情報システム部門だったり、情シスのかたが登場する小説がもともと多いので、それほど苦労はなかったですね。

――今回当誌「ジョーシス」からお願いした依頼は「情シスがかっこいい活躍をする」「問題を解決する重要な役割を担う」というものでした。その依頼には完璧にお応えいただいたと思いますが、作品の中にどんなメッセージをこめられたのでしょうか。

私は、情シス部門というのは、技術より人の側面の方が、大きい問題だと思っています。

一般に情シスというと、技術的に新しいものが出たから対応しなきゃとか、全社を統合して何をすべきかっていう話になりがちです。

しかし、まず前提として、会社全体がどうあるべきかという組織の話があります。そしてその次に、それを運用ベースにのせて上手く回すために、情報システム部門はどういう組織であるべきかという話になる。

そういう意味で、以前からあって、これからも続いていくであろう、組織のありかたなり、人のありかたにフォーカスした小説があれば、と思って書いたのが今回のお話です。

古くからあって変わらない情シスの課題

―― IT やインターネットは、最初に登場したとき、単に業務効率向上のために使われていました。近年それが、新しい事業や価値を生み出すインフラに変わりつつあります。一方で、クラウドコンピューティングの普及や、タブレットやスマホの業務利用など、技術的にも大きく変化しています。ここ最近、情シスの仕事はどう変化したと思いますか。

私は、情シスの仕事の本質は何も変わっていない気がするんです。先ほど申し上げたように情シスは、「技術部門として新しい動向を取り入れつつ適応していくこと」「会社という組織のなかのひとつの部門としてどうあるべきか」という、ふたつの課題を抱えています。

たとえば営業部門のような他の部門では、技術的な課題よりも人の課題が大きいことが、早い段階で認識されていました。

一方、情シスは、人と技術が両方あって、そこをうまくやりくりして調整していくのがむずかしい。これが情シスの仕事の本質で、これは、これからもずっと続くかなと思います。

むしろクラウド化が進んだりすることで、技術的な問題と、組織運用がどうあるべきかという問題を、はっきり定義しなければいけなくなる局面が訪れるような気がします。

情シスのキャリアモデルは未確立

――定義というのは具体的に、情シスの仕事の役割や範囲を決めるとかそういうことですか。

すごくわかりやすく言えば、たとえば情シスの人っていうのは、キャリアのモデルがないんですよね。

営業の人は「こういうキャリアステップを踏んで、最終的にはこれで上がり。大成功のパターンはこれで、普通の人はこれぐらい」、そういったキャリアのモデルが、どんな人にとっても明らかです。しかし、情シスっていうのはそれがまだはっきりわからない。少なくともほとんどの人にとってそうです。

たとえば、「情報システム担当役員( CIO )」というのが存在していますが、役割や能力は会社によって全然違います。

情シスのキャリアモデルがはっきりしてこないと「情シスは○○をする部門で、○○をする部門であれば、当然組織としてこういう風に動くべきである」というものも決まってこない。そのへんが非常にまだ曖昧で、企業によって異なっています。

私は、情シスの人は、CIO のような技術系のあがりを目指すより「技術のわかる営業系」のあがりを目指した方が、おそらくはるかに楽だし、組織にも貢献できるし、ご自身の報酬も高いと思います。

箱崎早希の今後の活躍について

――「箱崎早希と超可能犯罪」は、開発部門と営業部門の対立に光をあてる内容でした。情シスは、社内のいろいろな部門の矛盾を人的・技術的に解決していくポテンシャルを持っていると思います。今後続編がありうるとしたら、箱崎早希はどんな活躍をするんでしょう。

社内問題はいろいろあって、人事とか経理、法務などの間接部門にフォーカスした話はいろいろネタはあると思います。あとは外注管理とか。

また、最近は無差別に攻撃が来るので、情シスが外部からサイバー攻撃を受けるという話は面白いかと思います。

おそらく日本のほとんどの企業は、これから日常茶飯事で、国内外のハッカーからの攻撃にさらされるので、そのへんの話は非常に身近になっていくだろうと思います。

ただし、どこまでそういう話を盛り込んでいいのか、という躊躇はありますね。なぜなら、実際攻撃を受けたことがない情シスのかたからすれば、自社に関係ない話、と思われてしまうかもしれませんから。

――情シスは一技術担当者ではなく、企業の事業継承の門番であり、「ジョーシス」は情シス担当者の地位を上げていきたい、スポットライトを当てていきたいと思っています。そういう意味で今回の小説はとてもありがたいものでした。あらためて御礼を申し上げます。最後に先生の小説を読んだ、情シスのかたへメッセージをいただけないでしょうか。

どうか変化を恐れないで頑張って下さい。

――どうもありがとうございました。


<工藤伸治のセキュリティ事件簿番外編 箱崎早希と超可能犯罪の壁>
「1章 雨の降る日にはろくなことがない」を見る ≫
「2章 魔法使いの弟子」を見る ≫
「3章 超可能犯罪」を見る ≫
「4章 踏み台」を見る ≫
「5章 不可能納期」を見る ≫
「6章 大団円?」を見る ≫

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<プロフィール>
一田 和樹(いちだ かづき)
11月6日 東京生まれ。現在、カナダ バンクーバー在住。経営コンサルタント会社社長、ISP 常務取締役などを歴任後、2006年に早期引退。2009年1月より小説の執筆を始める。2010年、長編サイバーセキュリティミステリ 「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回 ばらのまち福山 ミステリー文学新人賞を受賞。現実に起こりうるリアルなコンピュータ犯罪と、ミステリを融合させる手腕に卓越し、受賞後に上梓した作品 「サイバーテロ 漂流少女」 は、慶應義塾大学 環境情報学部 教授 武田 圭史 氏 に 「重要で深遠なテーマを十分な技術的検証を踏まえた上で第一級のエンターテイメント作品として仕上げた」 と高く評価された。


 

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