情シスの未来は? 情シス「不要論」vs「必要論」

最近、さまざまな文脈で語られる情シス。なかにはその存在意義を問う「不要論」を論じる人も。なぜ今、情報システム化の萌芽期からITをリードしてきた情シスが、不要とされているのでしょうか? 今回は不要論からその謎を追い、これからの情シスに求められることを見つめていきたいと思います!

【なぜ?】チクリチクリと喉元にひっかかる、“あの言葉”

最近は、「守りの情シス」「攻めの情シス」、「ひとり情シス」「ゼロ情シス」など、情シスを語るいろんな言葉がありますね。ウェルカムな内容がすべてではないにしろ、情シスにスポットライトが当たるのはうれしい限り。でも、こんな言葉もあります。

“そもそも全否定やないかい!”と、ツッコミたいところですが・・・、これが実は存在感高め。4年ぐらい前からでしょうか、巷で「情シスはいらないのでは?」という認識が広まりはじめ、「不要論」なんて論まで論じられるしまつ。完全に駆逐モードです。

さて、今回のテーマはそんな「情シスの存在のあり方」について。不要論というからには、それなりの理由があるはず。「なぜ、情シスは不要といわれるのか?」を検証していきます。でも、ただでさえ暑くて夏バテ気味なのに、ネガティブ記事は書きたくない。そこで、“必要論”も投下。「不要論VS必要論」を語ることにしましょう。これは、輝かしい明日を掴むための情シスの戦いだ!

 

【不要論①】誰のために何をやっているのか、わからない〜情シスのスタンドアロン化〜

ITの活用がビジネスにますます求められる現代。これを考えれば、「ITの専門家」である情シスが大活躍して当然のように思えます。でも、現実はそうではないことの方が多々。一体、なぜなのでしょう。

・忙しい、また業務そのものが足かせに−−

インフラ運用・保守やセキュリティ対策に加えて、ヘルプデスクなど、多種多様な情シスの仕事。あっちで運用して、こっちでPCやアプリの使い方を教える。これでは、会社から何を求められているのか、立ち止まって考える暇もありません。さらに、中核業務である運用についても、マイナス要素が存在。そもそも運用は事業活動の安定化のための「手段」なのに、いつしか運用そのものが情シスの目的に。そして、上記の忙しさも合間って、改善を検討・提案せず、ただひたすら、運用をまっとうすることをよしとする体制になりがちなようです。

・情シスの仕事は利益につながらない(経営陣はそう思っている)−−

企業存続、事業継続にしても、会社の命題は一にも二にも利益。どんな理由があれ利益に寄与しなければコストとみなされます。そこにきて、仕事が利益に直結しない情シスはコストと思われがち。加えて、経営陣との没コミュニケーションも多いようで、運用の方向性が会社の指針と合致しているかわからない、また、そもそも情シスからも提案しない。それゆえ、何をやっているかどうかを把握できず、その存在に疑念を抱く経営陣が多いといわれています。

・事業部のIT活用にNO! (そして、事業部とベンダーは蜜月へ)−−

今や、ITに詳しく、自分の業務に必要なITシステム・サービスを理解している事業部も少なくありません。一方、そんな事業部のIT活用に対して、不動の門番のように「NO!」という情シス。これは、ガバナンスやセキュリティを守るがゆえ。しかし、近年では積極的なIT投資がビジネスに欠かせません。そこに対して、情シスが適したジャッジを行えていないといったことも指摘されています。また、「いつ提案しても断られる」ことから、昨今は情シスを介せず、事業部門が直接ベンダーとやりとりし、システムを導入するケースも散見されています。

【不要論②】ITスキルが求められなくなってきている

インプレスのWebメディア「クラウドWatch(https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1118050.html)」が紹介している、シスコシステムズのネットワークソリューション・ブランド『Cisco Start』はじめ、近年「専門的なITスキルを持たずとも導入・運用できるソリューション」が続々と登場。情シスの運用に頼ることなく、導入し扱える時代です。

さらに、AWSやAzureなどのクラウド基盤サービスを活用すれば、自社データセンターを持つ必要はなく、サーバー管理に人材を割く必要はない。つまり、情シスのメインの仕事である管理・運用がそれほど必要とされなくなっています。この時代の流れが、情シスの存在の希薄化を加速させていると考えられます。

 

【必要論】でも、これからの時代に必要なのは、やはり情シスなのでは?

情シスのスタンドアロン化と事業部へのITの浸透。この2つの要素は、とても高いハードルとして情シスの前に立ちはだかっています。では、やはり不要なのか? いえ、そんなことはありません。

・本来、情シスは「IT戦略部隊」である−−

ITmediaの「ITソリューション塾」の記事『歴史を振り返れば見えてくる情シスの存在意義とIT営業の存在意義(http://blogs.itmedia.co.jp/itsolutionjuku/2016/02/it_16.html)』にとても興味深い文章があります。

“略〜、情報システム部門のスタッフは業務とシステム技術に精通し、両者の架け橋としての役割を担う専門家集団として、花形の仕事でした。”−−

今から半世紀前の話、1960年代〜1980年代にかけてのことだそうですが、事業部と密接につながり、会社のIT化をリードしてきた時期があるとのこと。つまり、今企業に求められていることをはるか昔に担っていた部門が情シスなのです。

・ITの重要性はこれからも高まり続ける−−

今や、ITなしに企業活動は行えないといっても過言でありません。また、今後あらゆる企業は、好む好まざる関係なく、ITうまく活用していかなければ競争性を維持できないともいわれています。このITを、どの部門よりも担ってきたのが情シスです。そして、今後もITはますます重要度を増す。それを考えれば、情シスの必要性が失われることは考えにくいのではないでしょうか。

【進化のとき】その能力を全解放し、受け身を捨て去る

ひとつは、本来の姿はIT戦略部門だということ。もうひとつは、ITの重要度が増していくビジネスの潮流。この2つが情シスの存在を担保します。しかし、残念ながら、それは今のままでよいということではありません。「進化」という絶対条件をクリアする必要があります。

先述したように、情シスに対する企業のイメージは「管理・運用が仕事」「コスト」「事業部や経営陣と疎遠」です。これでは、不要といわれるのは仕方のないこと。まず、このイメージを払拭していく必要があります。

・『運用はクラウドや自動化で率先して業務負荷を軽減』
進化に向けて、フラットに動ける環境づくりに取り組みましょう。クラウドの活用や自動化などを行い、システム運用にかかる労働負荷を減らしていきます。

・『自分たちがやっていることを社内に見せる』
「なにをどうやっているのか」を社内に伝えられるようにします。頭ごなしにコスト的存在と思われるのを回避でき、かつコミュニケーションの円滑化にも効果的です。

・『事業部の抵抗勢力にならない』
あたらしいITの導入可否について、事業部との齟齬が生まれるのは、ガバナンスやセキュリティゆえ。しかし、これらは「手段」であって、「目的」ではありません。自分の知らないからとNOではなく、事業部の意見に耳を傾けましょう。しっかりした理由があれば、まず使ってもらってもよいと思います。

・『エバンジェリストをめざす』
プログラミングや運用の知識だけではなく、あたらしいシステムやサービスのことなど、「ITのことなら全部お任せ」とアピールできる存在になりましょう。そこから、事業部の課題に対する提案も率先して行えるようになります。また、情シスだけで使われる用語で説明しても、他部門の理解は得られません。専門用語を咀嚼してわかりやすく伝えられる「エバンジェリスト」をめざしましょう。

・『ビジネスへの積極的な貢献をめざす〜会社の事業を把握し、現場を見る〜』
会社のビジネスに活かせるIT。今、情シスに求められているのはこの選定です。視野を広げ、会社の事業を把握しましょう。また、現場でどんなことが行われているかを把握し、他人事ではなく自分の課題として共有しておくことも大切です。

 

しかし、進化は情シスだけでは行えない−−

上記をめざすとき、情シスはふたたびIT戦略部隊の姿を取り戻すことでしょう。しかし、現状からすれば、これらは180度の転換を強いられること。容易い道のりではありません。さらに、ビジネスに貢献する「攻めの情シス」をめざせといわれても、事業部と異なりインセンティブも付かない既存の評価基準では、モチベーションにも限界があります。情シスの進化は情シスのみでは難しいのです。

クラウドネイティブなITリテラシーの高い世代が社会の中心となる時代が来れば、また別かもしれませんが、PC他のITツールが企業運営に欠かせない以上、誰かがその役割を担うことは間違いありません。

会社が、情シスの進化を支える。より増していくITの重要性を考えれば、不要論を論じるよりもメリットのあることだと信じています。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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