【情シス奮闘記】第9回 仮想化でIT基盤を刷新・統合 自らが主導で最適なシステムを構築 ほくほくFG

2016/12/26

ほくほくフィナンシャルグループ(FG)は、仮想化技術を使ったIT基盤を導入した。2017年前半の本格運用を目指す。ほくほくFGは、2004年9月に発足した北陸銀行(北陸銀、富山市)と北海道銀行(北海道銀、札幌市)を傘下に持つ地銀グループだ。

銀行業界を取り巻く経営環境は厳しさを増している。日本銀行によるマイナス金利政策で利ざやが縮小するなどの影響があるためで、地銀も例外ではない。

こうした環境の下、ほくほくFGでは、2016年4月から2019年3月までの中期経営計画「BEST for the Region」を策定。その中で「経営の効率化」を打ち出した。その1つとしてITシステム統合によるコスト削減が不可欠と判断し、仮想化技術による新たな基盤を構築。これに合わせ傘下の北陸銀、北海道銀も自行のシステムの刷新や更新に着手した。

堀洋人・北銀ソフトウエア 開発第一部 担当部長(左)、富永英司・北陸銀行 総合事務部 IT企画グループ長

堀洋人・北銀ソフトウエア 開発第一部 担当部長(左)、富永英司・北陸銀行 総合事務部 IT企画グループ長

ほくほくFGと傘下の銀行は、どのようにITシステムの導入に取り組んだのか。ほくほくFGと、グループの一旦を担う北陸銀のシステム刷新に取り組んだ富永英司・北陸銀行 IT企画グループ長と、北銀グループのITシステム会社、北銀ソフトウエアの堀洋人・開発第一部担当部長に聞いた。(取材・文:ジョーシス編集部 編集長 米山淳)


中期経営計画を契機にIT基盤を統合、コスト削減を加速

ほくほくFGでは金融サービスを担う「勘定系」と、メールなど一般的な事務作業を行うための「情報系」と、大きく2つのITシステムが稼働している。そのうち勘定系システムは北陸銀行、北海道銀行、横浜銀行(横浜市)、七十七銀行(仙台市)が参加する共同利用システム「MEJAR(メジャー)」に移行することで運用コストの削減を図った。

一方、情報系システムでは北海道銀行が2009年、北陸銀行は2010年にデスクトップの仮想化を導入。運用コストなどを押さえる効率化に取り組んでいた。仮想化したPCや端末は北海道銀が3100台以上、北陸銀は2000台にも上る。デスクトップの仮想導入は地方銀行の中では先端的な取り組みだったという。

こうした状況のなか、ほくほくFGでは、2016年5月に中期経営計画「BEST for the Region」を策定。コンセプトの1つ「経営の効率化」で、ITシステムの統合による一層のコスト削減とグループシナジーの追及を打ち出した。

主眼となったのは両行の情報系システムでデスクトップとアプリケーションを共通化するIT基盤の構築。それぞれの銀行がこれまで使ってきた個別のアプリケーションは残しつつも、業務アプリケーションと基盤は統一することに決めた。背景には「勘定系は1つで動いている。情報系も統合して1つでよいのではという発想があった」(富永英司・北陸銀行 IT企画グループ長)という。

ほくほくフィナンシャルグループのシステム構成図

ほくほくフィナンシャルグループのシステム構成図

こうした考えから着目したのが仮想化技術だった。仮想化ならハードウェアをはじめとするシステム構築でムダな投資を抑えられるほか、クライアントPCの管理コスト削減やセキュリティの向上が期待できる。また、タブレット端末の活用も見込めた。

この条件の下、ほくほくFGでは、2016年2月から新たなIT基盤の選定を開始。同年7月にシトリックス・システムズの仮想化ソリューション「XenDesktop(ゼンデスクトップ)」の採用を決めた。新たなIT基盤で使用される端末は、北陸銀がタブレット1700台を含む4000台、北海道銀はタブレット800台を含む4000台を予定している。

調査で知ったSIerがいない米国 自分たちで考え構築を決意

グループの情報系IT基盤の統合を受け、傘下の銀行もコスト削減を主とする新たなITシステム導入に踏み切った。北海道銀では2009年の仮想化システム導入でグループが採用したシトリックスの仮想化ソリューションを導入しており、上位製品へのアップグレードを実施。16年8月に着手した。

一方、北陸銀は自行システムの大幅な刷新が必要だった。「最初の仮想化では、インターネットが分離されていて、非常に使い勝手が悪かった」(同)というのが理由だ。また、支店にはインターネットやイントラネットに接続している端末が数台しかなく「インターネットを活用してないのに等しい。ビジネスにはマイナス」(堀洋人・北銀ソフトウエア 開発第一部 担当部長)ということもあった。こうして北陸銀の新たなシステム導入の取り組みが始まった。

「コスト」「セキュリティ」「ユーザービリティー」。現状の課題を受け、新システム導入で北陸銀が掲げたコンセプトは、この3つだった。「コスト」と「セキュリティ」ではサーバー、クライアントPCやタブレットを統一し費用を削減することと、インターネットやクラウドなどの安全な利用を想定。既存システムでもこの点でメリットのあった仮想化技術の採用を継続し、システム構築の核に据えた。

「ユーザービリティー」では、業務のやり方を変えることを念頭に、モバイルに対応させてタブレット端末を活用することを目指した。具体的には、営業担当者がタブレットを使い顧客情報の照会などで活用することでサービスの向上につなげたり、稟議などの行内の事務作業で利用することで効率化を図ることを狙った。

一般にシステムの構築では企画から1社のベンダーがすべてを請け負う。しかし、北陸銀行の新システムは北陸銀行と北銀ソフトウェアが構想し、複数のベンダーがそれぞれハードやソフト、ストレージ、ネットワーク機器などを担当している。これには理由がある。

実は北陸銀では中期経営計画の策定前から既存の仮想化システムの課題を感じており、刷新について水面下で模索していた。「現場の不便さを一刻も早く改善したかった」(富永IT企画グループ長)ことが背景にあったという。その一環として富永IT企画グループ長と堀担当部長は、2014年に新システムの構想を得ることと、最新のIT技術を調査するため、米国のシリコンバレーに渡った。

ここで2人は米国にはシステム構築を行うシステムインテグレーターが存在せず、企業が自らベンダーを選んでITシステムを構築していることに衝撃を受ける。このことを知った富永IT企画グループ長は自分たちでもシステム構築ができると確信。「(システム構築を)自分たちでやろうと決めて、自分たちで構想したものを構築する方法を考える」(同)という方針を決めた。同行した堀担当部長も「シリコンバレーの道の真ん中で『俺たちでやろうよ』と富永さんに言われた」という。

新システム導入の動きが本格化したのは2015年10月。ここから3か月をかけてベンダーや仮想化ソリューションなどの情報を収集。6か月をかけて集めた情報の精査を行った。

仮想化ソリューションでは候補になったベンダーは2社。セキュリティ機能では差がなかったが、コストとユーザービリティーのよさが決め手となり、グループと同じシトリックスの「XenDesktop」の採用を決めた。ストレージやネットワーク機器なども自らが最適と思うものを吟味して選び出した。その結果、「得意分野でそれぞれのベンダーがタッグを組んでくれた。これが本当のアウトソーシングになった」と堀担当部長は胸を張る。

「現場がベンダーに丸投げはサボっているのと同じ」

自らが主体となり部分部分で最適なベンダーを選んでシステム構築を行うことを決めた富永IT企画グループ長と堀担当部長だったが、着手のためには、構想したシステムについて役員を説得するという難関が待ち構えていた。

「実績がすべて」(富永IT企画グループ長)という銀行にあって、仮想化ソリューションでは北海道銀行で導入されていたシトリックスの採用に反対意見はなかった。その一方で「なぜ1つのベンダーにしないのか」と指摘されたという。

それでも、富永IT企画グループ長と堀担当部長は譲らなかった。「自分たちで考えて作らないとよいものができないと声高に説得した」と富永IT企画グループ長は振り返る。2人はグループ、北陸銀、北海道銀の会議に出席し説明を重ねた。時にはベンダーを同席させて説明を行ったほか、個別に役員とも話をした。こうした苦労のかいもあり、何とか了承にこぎつけることができた。

「よく『OK』と言ってもらえたと思った。ただ『これでなければやらない』とも言った」。富永IT企画グループ長は当時を振り返って笑う。こうして2人が構想したシステムの導入が正式に決定した。

新システムは2016年7月から構築を開始。FGの新しいIT基盤と同じく2017年前半での稼働を予定している。実際の導入では「自分たちが持っているシステムを精査して、練り込んで構想した。その構想が実現できるベンダーを選定したので苦労はなかった」と富永IT企画グループ長は言う。堀担当部長は「最初の一歩を出すことが苦労といえば苦労だった」と話す。

新システムでは2人が構想したコンセプトは実現されたが、満足はしていない。盛り込めなかった機能があるからだ。例えば、タブレットを使ったテレビ電話で担当者と顧客が会話したりすることや電子署名の利用があるという。また「タブレットでテレビ電話ができるようになれば、実家と都会とで離れた家族の資産管理の話し合いや契約ができるようになる」と富永IT企画グループ長は説明する。

これ以外にも「我々が考える自由でシンプルという考えが反映されていない部分がある。この部分を自分たちで変えて、さらによいものを作りたい」と話す。また、行内からは「自分たちが気付いていない部分を改善して欲しいと言ってくることを期待している」という。

北陸銀ではITシステム導入で、今後も自らが構想し、ベンダーを選んでいくというスタイルを継続していく考えだ。この方針はほくほくFGでも適用されるという。

そこには今回のシステム刷新から学んだ「現場がベンダーに丸投げ状態でいるのはサボっていることと同じ。それでは自分たちに最適なものはできない」(堀担当部長)という実感がある。「(システムが)動かなかったら困るのは自分たち。自分たちで作ったものなのだから、ベンダーに丸投げしてはいけない」。富永IT企画グループ長は力を込めてこう語った。

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