迫りくる”改元”、情シスの備えはもう済んでいるか?

平成31年、とうとう平成最後の年が幕を開けた。先日、安倍首相は三重県伊勢市での年頭記者会見で、「5月1日の新天皇即位に伴う改元について”国民生活への影響を最小限に抑える観点”から、4月1日に改元の政令を閣議決定した上で事前公表する」と正式表明した。国会内でも根強い反対があったようであるが、民間のシステム改修などを巡る混乱を避けるため、1カ月間ではあるが準備の期間に配慮した形である。しかしながら、本当に公表1か月の猶予で、改元対応は可能なのか、どのような備えが必要なのか、改めて確認していく。

遅れ続けた新元号公表時期

政府は終始、「生前退位のメリットを生かす」と事前公表の方針であった。保守派との調整が長引いたこともあり、その時期は紆余曲折を経ながら遅れに遅れた。当初の予定では2018年中に公表することを前提に、夏ごろの公表も検討していた。しかし、保守派から「早すぎる公表は今の陛下に失礼である」との声もあり、19年2月24日に開く天皇陛下在位30年記念式典より後の公表が有力になったという。
政府は保守派への配慮と「改元1カ月前の公表」を想定して官民のシステム改修が進んでいることを考慮した結果、1か月前の4月1日の公表を決めた。政府は大きな混乱を想定していないという一方で、1カ月前の公表でも、税や社会保障に関するシステムの一部で改修が間に合わず、5月1日以降も「平成」を一定期間使い続ける見通しもある。また、政府は円滑なシステム対応を進めるため、民間企業にも来年4月1日の新元号公表を想定した、システム改修を要請している。

「改元に伴うシステム対応」に必要な基礎項目

平成への改元を経験している企業は、既に西暦/和暦の変換処理を組み込むなど、何かしらの対応を施していると考えるが、しかしながら、前回の元号改定を経験していない企業、中でもフルスクラッチで構築した社内システムを利用している企業は深刻だ。
その為、経済産業省からも、情報システムの新元号対応に必要な基礎事項が記された周知文書「改元に伴う情報システム改修等への対応について」が各業界団体に向けて発信されている。

改元に伴う情報システム改修等への対応について
1.情報システム改修等の対応
(1)元号をデータとして保有している場合、元号データの変更や追加または西暦データへの統一化
(2)書面やシステム上に元号や「元年」を印字・表示している場合、印字・表示内容の変更
(3)西暦と和暦との変換処理を行っている場合、変換ロジックの変更または変換テーブルへの登録
(4)他の事業者や関係機関のシステムと情報連携している場合、当事者間での対応策の必要性確認
(5)その他、必要な対応

2.事務・運用面の対応
(1)元号の記載が含まれる証書・帳票等の記載の変更
(2)旧元号が記載された状態で利用が想定される契約書等の証書や帳票等の取扱の明確化
(3)運転免許証等の官公署発行の証明書等に旧元号が残る場合でも、有効な証明書等として受け付ける措置
(4)顧客に影響が生じうる事項への対応策等に関する顧客への十分な周知
(5)その他、必要な対応

出典:「改元に伴う情報システム改修等への対応について」(経済産業省)

同文書では、新元号対応が間に合わないことも想定しており、”優先順位を付けた対応が必要”との付記もある。その場合には、旧元号と新元号が併用されることも想定した運用についても留意すべきとしている。

他人事ではすまない、新元号への備えは万全か

(システムとして)新元号へ対応すること自体は難しいことではないと情シスや社内SEの方々はおっしゃるであろう。しかしながら、改元の対応が想定されていなかったシステムでは、その準備には多大な時間を必要とする。

そもそも、情シスは新元号に影響されるものが何かを把握しているべきであり、新元号対応は、自分たちへの影響範囲を把握するところから始まると言ってもよいだろう。
実際に、元号で記入されることが多いものとしては、官公庁、金融機関、公的機関等へ提出する書類がそのほとんどであろう。社会保険系の帳票、年末調整、税関連の申告書等には元号が用いられている。そして、そうした書類を扱う給与システムや会計システムにも、新元号対応に向けた早急な改修が必要になる。
以下に影響範囲の例を挙げる。

改元による影響範囲(一般事例)

会計範囲
・税申告関連
・手形、支払調書
・源泉管理
・償却資産申告
・各種明細、証明書
・FB(ファームバンキング)データ出力

人事給与範囲
・税申告関連
・社会保険関連
・年末調整関連
・各種統計資料、証明書
・FB(ファームバンキング)データ出力

この例を見ても、対応する必要がある範囲は多岐にわたるといえる。
もし、これから対応するという企業があるとすれば、それは”至難の業”と言わざるを得ない。しかしながら、システムに既存のクラウドサービス(パッケージ)を利用している場合などは、サービスベンダーがその対応を行う為、自分たちは一切関知せずに対応が完了する。
残念ながら、もはや手を入れることができないシステムとなってしまっている場合は、時間の余裕はないが、新システムに移行するというのも一つの選択肢である。

新元号対応は猶予1か月で可能なのか!?

まず新元号対応に向けた作業がどのくらいあるかを見ていくことにする。情シスの方なら当然ご存知かもしれないが、例として、必要となる作業項目を以下に挙げる。

システム修正に必要な作業項目(例)
1)作業見積
2)(発注)
3)要件定義や影響分析
4)設計書作成
5)プログラミング
6)システム的なテスト
7)業務運用テスト
8)設計書修正/プログラム修正
9)本番稼働判定
10)本番稼働対応

1~6までは新元号発表前までに済ませておく必要があるが、7以降は新元号発表後の1か月で実施することとなる。
1~6までをしっかりと準備し、公表と共に7以降の作業に取り掛かれば、間に合うであろう。しかしながら、猶予は1か月であり、一般的なワークデーでカウントすれば20日しかない。システム規模や連携範囲が大きくなればなるほど、間に合わせるためにはお金の問題や人材の問題をクリアする必要があるであろう。
また、社内システムが外注されている場合は、さらに困難な状況になるといえる。なぜなら国内のすべてのシステムが変更される為、瞬間的な人手不足は避けられないからである。
さらに、自社で対応する場合であっても、情シスに人手がない場合はITコンサルティングやシステム開発会社の支援を受けた方が得策かもしれない。まずは、しっかりと相談ができるパートナーを見つけることが失敗しない秘訣である。

 

合字問題、昭和100年問題と元号を取り巻く問題は様々あるが、将来をきちんと見越したシステムであるかは、これを機に見直してみる良い機会かもしれない。

 

おまけ:新元号公表日「4月1日」の決定打はウィンドウズ更新?

新元号の公表日を当初検討していた4月11日から土壇場で4月1日に前倒になった要因は、マイクロソフトの「Windows更新時期」とも言われている。
Windowsは言わずと知れた大半の日本企業が導入しているPCのOSであり、毎月1回、第2水曜日に全世界統一でソフトの更新を行っている。その為、4月は10日、5月は8日となる。当初、保守派への配慮から4月10日に開かれる「天皇陛下御即位三十年奉祝感謝の集い」の翌11日に新元号の公表を検討していたものの、11日ではソフト更新に向けた改修作業が次の5月8日まで行うことができないこともあり、同月1日の改元には間に合わない。また、新元号の公表日として、一時は暦で大安の4月3日も浮上していた。だが、1日でも早い公表が望ましいとして、最終的に4月1日で決着したという。

 

【執筆:編集Gp ハラダケンジ】

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