AI Vol:08「AIは、哲学だ!!」

世の中AIブームといえる状況であるが、業務システムへの展開により、情シスにとってもAIに関わることも増えつつある、またはこれから増えるのではないだろうか。
そんなAIについて、本シリーズでは、その生い立ちや基礎知識、動向などAIの様々な面を解説する。
今日のテーマは「AIと哲学の関係」。

AIの存在は、さまざまな分野で注目を集めています

この間、丸ビルにある丸ビルホール&カンファレンススクエアでとてもエキサイトなイベントがありました。

その名も、「AI×ゴリラ×仏教−人間とは何か−」。

『超人工知能』など、AIをテーマにした著作で知られる経済学者で駒澤大学教授の井上智洋さん、ゴリラ研究の権威で京大総長の山極壽一さん、仏教者で大谷大学学長の木越康さん。各カテゴリのトップランナーが集まり、テクノロジー、生物、宗教それぞれの視点から、これからのAI時代に人はどう向き合うべきか? を語るフォーラムです。

かなりおもしろい内容で、“AIブッダ/AI菩薩”なるエッジの効いたキーワードも登場しましたが、個人的にとりわけ興味深かったのが、井上さんの「AI研究者には哲学好きが多い」という話。一聴すると意外ですが、AI業界に哲学ファンはとても多いそう。日本のAIベンチャー「アラヤ・ブレイン・イメージング」の“アラヤ”も、仏教用語の五感が受け取る情報の蓄積を表す概念「阿頼耶識(あらやしき)」をもとにしているとか。

 

AI自体が哲学なのかもしれません

それでは今回は、人工知能と哲学のお話です。と、いきたいところですが、そもそも・・・。

哲学って、なんでしょう?

もう20年以上の前。中学生のころに、『ソフィーの世界』という哲学をベースにした物語がベストセラーになりました。内容を要約すれば、主人公のソフィーのもとに哲学者から「あなたはだれ」という手紙が舞い込み、「わたしってなんだっけ」を探す旅がはじまるもの。ここから考えれば、「謎とき」が哲学?

「愛ってなに」「しあわせってなに」「人はなんのために生きてるのか」など、「謎」の種類は違えど、すぐに正解がでない疑問に向かう学問なのかも。

さて、ここで人工知能の話をすると、AIがめざすのは「脳」というこれまた難しいモノの再現。だからこそ、研究者は哲学にシンパシーを感じる人が多いのかもしれません。

無数のニューロンのシナプスが情報伝達物質を相互に受け取りながら、独特のネットワークをつくっていく。このように脳の情報伝達の仕組みはわかっています。でも、「わたしとあなた」、「前にやったことがあるから楽勝だ」など、「なぜ脳は認識できるのか?」や「記憶を脳はどうのように活用しているのか?」は、未だベールのなか。私たちの日常では、仕事や遊びでも仕組みがわかれば大抵のことはフロー化できますが、脳の再現はそうはいかないのです。

それはいずれ判明するのか、永遠の謎なのか。それ以前に、そもそも人間とは何か。その問いのなかで行われるAI研究は、それ自体がまさに哲学だともいえます。

 

脳を再現すること、同時にそれは人を知ることです

人工知能研究の権威・松尾豊さんは、SENSORSインタビューで「人間らしさ」について、「協調・他者理解・共感だと思う」と話しています。また、冒頭のフォーラムで、山極さんは自身の研究から、「人と動物の違い」について「それは分かち合い」であるとし、ゴリラのようにコミュニティを形成する動物でも、食べ物を他者と分け合うことはしないといいます。

この協調・分かち合いが果たして、脳の仕組みによるものなのか、はたまた無意識からくる人間の性質なのかはわかりません。でも、脳があらゆる私たちの活動や思考のコアになっていることを考えれば、密接な関係がありそうです。そうであれば、脳の再現である人工知能も、分かち合いの探求が重要。そして、そこを解き明かすか否かで、人工知能がいずれ脳の再現するのか、脳的なものになるのか、変わるといえます。

 

AIは争いをなくすヒントをも与えてくれるようになるでしょうか

最後にもう一つ。フォーラムでの木越さんの話。先述のアラヤ・ブレイン・イメージングのもとになった阿頼耶識からは、末那識(まなしき)という概念が生まれるといいます。わかりやすくいうと、人が阿頼耶識の認識を誤り、末那識に至るそうです。末那識は争いにもつながる我執のもとになるそうで、本当の幸せや豊かさを求めるためには、我執を捨てた利他的判断が大切だといいます。

この阿頼耶識→末那識または利他という流れにも、人工知能のヒントが隠されていそうです。誰もがうなずき納得する満場一致の世界。人間の歴史にそのような時代があったのかは不明ですが、人工知能が分かち合いを理解し、利他的判断が行えるようになれば? それこそ、人工知能は脅威ではなく人類に多大な恩恵を与えるテクノロジーになることでしょう。世界から争いがなくなる術を教えてくれるかもしれません。

スティーブン・ホーキング氏は生前、人工知能に警鐘を鳴らしていた科学者の一人ですが、「人類にとって最高または最悪になりうる」としたうえで、「人類の課題に有用なテクノロジーになるかもしれない」と、肯定的な発言もしています。

果たして人工知能はどうなっていくのか? もしかしたら、その問いを続けていくことが、人間とってよいテクノロジーにするための最善の方法なのかもしれません。

今、実現が難しいとされていた、人間と同等の知能を持つ汎用人工知能は、2030年に誕生するといわれています。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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