APIでつながる、新しいクラウドサービス(SaaS)の形

経済の新たな原動力として注目されるAPI。業務システムとしてクラウド(SaaS)を利用することが一般化されつつある昨今では、新たな役割も期待されています。昔からあるAPI技術が現在どのような効果があるのかご紹介しましょう。

【なぜ、今API?】APIが加速する背景

APIは、Application Programming Interfaceの略であり、プログラムモジュール間を疎結合で連携させる仕組みです。呼び出し元がリクエストを送信し、呼び出し先でリクエストとパラメータに応じた処理結果を返すというものです。呼び出し先のシステムの内容がわからなくても、呼び出し方さえ知っていてれば結果を取得できるため、セキュアに連携できるというメリットがあります。
もともとAPIは企業内のアプリケーション同士を連携させることで始まりました。クライアント/サーバー形態の全盛時代には独自のアプリケーションを開発する際に、他のシステムのマスタを検索するなどの場面でよく使用されました。このときのAPIはOSに依存していたため、異なるOSで利用することはできませんでした。
そこで登場したのが、インターネットのHTTP/HTTPSで通信するWeb APIです。当時Web APIはXMLのデータ形式でSOAP方式を採用していました。これによりOSに依存することなく、システム間の連携が可能になったのです。ただ、SOAPは呼び出し元・呼び出し先とも処理が複雑だったため、企業の枠を超えて普及することはありませんでした。
爆発的に普及したのは2000年代半ばから。先進的なWebサービスの総称「Web2.0」という単語がバズワードとなり、Web2.0を形成する技術として活用されるようになります。
連携方式についてもREST方式が用いられるようになりました。複雑だったSOAPに比べ、RESTはやりとりがシンプルで、大規模システムに対応できる拡張性を持っています。
その代表格がGoogle Mapsです。例えばある企業のWebサイトに自社の地図を表示する際、Googleの提供するAPIを呼び出すことで自社のホームページにGoogle Mapsが表示できるようになりました。ブラウザとサーバー間において、非同期でデータを送信するAJAX技術によりページの表示に遅延を感じさせない仕組みで利便性が向上しました。

 

【クラウド同士を連携】SaaS時代のAPIの役割

そして、現在はAPIエコノミーが注目されています。自社システムのAPIを公開することで、課金するまたはバックマージンを得るビジネスモデルです。利用する側は、APIを組み合わせることで、自社で開発することなく便利な機能を提供することができるようになります。


例えば、Google Mapが提供するAPIは誰でも無料で使うことができますが、無料で表示できる回数に制限があり、それ以上表示する場合は有償プランの契約が必要です。(始めるときは無料だったが、サービスが人気となり課金対象となったことで、廃業に追い込まれたサービスもあるとか)
ちなみに配車サービスUberでは、「配車」というボタンを表示するAPIを公開しています。配車ボタンを押すと、Uberのシステムが現在位置まで配車してくれます。配車が決定したらUberからバックマージンが支払われます。バックマージンの魅力によって、他の企業がUberのサービスを勝手に広めてくれるのです。
このようにAPIを介して他社の資産を活用する、または他社に自社の資産を活用してもらうことでマネタイズする取り組みが始まっています。提供されているAPIについては、楽天やKDDIがマーケットプレイスを運用しており、API提供者と活用したい企業とのマッチングを支援しています。

そして、ここにきてAPIは日本の金融業界を大きく変えようとしています。2017年には銀行法が改正され、銀行に対してAPI公開の努力義務が課せられました。銀行の勘定系システムは非常に複雑で、簡単にデータを見られる構造にはなっていません。
しかしながら、APIで外部の企業が口座情報の取得や、振り込みなどをできるようにすることで、外部企業との連携によるイノベーションを促進する狙いがここにあります。

例えば、三井住友銀行ではLINEを使った残高照会や入出金照会ができるサービスを開始しています。

<画像出展:http://www.smbc.co.jp/sns/line/service.html

 

スマホアプリを使ってのインターネットバンキングも勿論可能ですが、特定の用途が普段のコミュニケーションツールであるLINEでできることは大いに意味があります。

 

このような変化は金融業界だけではありません。現在小規模企業を中心として、販売・労務管理といった業務のためにクラウドサービス(SaaS)を利用することが多くなってきました。しかしクラウドサービス(SaaS)の多くは業務領域のごく一部分のみしかカバーしていないことが多く、企業はいくつかのクラウドサービス(SaaS)を組み合わせて使っているケースが多く見られます。また、連携する方法についてもCSV形式ファイルによるインポート・エクスポートがほとんどであり、担当者としては“できる”といっても非常に手間がかかるものでした。
しかしAPIを活用すれば、手間がかかる作業を自動化することができます。例えば、小売業ではPOSレジシステムと会計システムをそれぞれクラウドサービス(SaaS)で利用している場合、会計システムが提供するAPIを呼び出してPOSレジの売上情報を連携することができます。異なる事業者が提供する複数のクラウドサービス(SaaS)を、APIを介して連携させ、あたかもひとつのシステムのように連動させて使えることは、使う側にとっては大きな魅力ではないでしょうか。

 

【事例】API、実際どうつながるの?

実際にAPI連携されているサービスをご紹介しましょう。

・freee

クラウド型の会計ソフトや人事労務ソフトを提供するfreee では、サービスを開始した直後からAPIを公開するなど、複数のクラウドサービスを利用する「クラウドインテグレーション」を推進してきました。
例えば、請求データをSFAシステム「Sales Cloud」と会計システム「クラウド会計ソフト freee」とでAPI連携することができます。「Sales Cloud」上から請求書の発行を行い、APIを介して「freee」上で自動仕訳を行います。また、入金をリアルタイムで「freee」から取り込むことで、迅速な回収を促すことができます。その他にもGoogleの「G Suite」やヒューマンテクノロジーズの勤怠管理システム「KING OF TIME」など連携するサービス領域を拡大しています。
2018年5月には、APIエコノミー形成を目指す新戦略「freee オープンプラットフォーム」構想を発表しました。API連携の専任チームを設置し、クラウドベンダー向けの説明会開催やテクニカルサポートを行っています。

・OBC

OBCもクラウド型業務ソフト「奉行クラウド」の機能上位版として「奉行クラウド API version」を発表しました。そしてもともと奉行シリーズと連携していた200種以上の業務・業種アプリケーションについて順次API対応をしていく予定です。
連携の第1弾はクラウド型POSレジ「スマレジ」です。売上・入金データをリアルタイムで連携できるため、従来のように送信・受信処理が不要になります。入力ミスも経理上の赤黒処理に連動できるようになっています。

 

【脱・自前主義?】API活用を見据えたシステム導入を

情シスとして“内製化”は目指すべき大きなテーマではありますが、一方で、良いものは積極的に利用しようという「脱・自前主義」の潮流が企業規模の大小を問わずにあることも事実です。
クラウドサービス(SaaS)は、たいていの場合、ある目的に特化して作られている為に、とても使いやすいという側面がありますが、その特化していることが他のことには使えないという側面も創り出していました。
しかしながら、APIでサービスを組み合わせて得られる新しい価値=APIエコノミーは、クラウドサービス(SaaS)の利用機会拡大を生み出し、基幹システムなどにも活用されていくものと思われます。

 

今後のシステム導入の際にはAPI連携を見据えた選定は不可欠になるでしょう。

 

【執筆:編集Gp 山際 貴子】

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