BCI:AIを超える!? 脳にチップを埋め込む日…

2018/06/14

脳にチップを入れるBCIという技術があります

今、2045年に人類の知能をAIが超えるという「シンギュラリティ」が何かと話題ですが、その影で、はじめて聞くと、マンガや映画の世界としか思えない研究が推進しています。

それが、「人の脳へのチップの埋め込み」。

先日も米国で「BDYHAX2018(BodyHacking Convention)」が開催され、DARPA(米国政府機関)も基調講演を行うなど、最先端分野の一つです。

 

「BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)」や「脳インプラント」などとよばれますが、そこに広がるのはまさに『攻殻機動隊』や『マトリックス』の世界。頭蓋骨のなかにあるチップが脳の情報を出力し、外のデバイスと通信し合う。一聴しただけでは、かなり未来を感じさせるサイバーパンクな話題。

・・・と言っても、BCI研究の歴史は実は長く、かつ「体の自由がきかない人や難病の人のサポートに使われてきた革新的な技術」なのです。今回はBCIについて見ていくことにしましょう。

脳内チップは、これまで多くの患者さんを支えてきました

少し複雑になりますが、BCIほかに「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」という言葉もあります。現在では、ほぼBCIと同義として扱われる傾向にあるのでここではBCIで統一しておきます。

医療界では、1960年代からすでにBCIの研究が行われていました。はじめは電極を埋め込んだヘッドセットを頭部に装着するといったもの。目的は、四肢・眼球麻痺により身体動作や発話ができない「閉じ込め症候群」や、全身の筋肉が萎縮する「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者さんのQOL改善で、ヘッドセットで脳波を取得し、体の動かない患者さんがコンピュータを操作できるようにする研究です。

そこから、10年程度の時を経て行われるようになったのが、脳内チップでした。70年代後半になると、「視覚障害の人に視感覚を与える治療」に活用されはじめます。さらに、80年代後半では、「パーキンソン病や合併症としてのうつ病、ジストニアの諸症状の改善」に期待できるBCIが報告されます。外部スイッチによりチップが脳に電気刺激を与える方法で、これを「DBS(ディープ・ブレイン・スティムレーション)」といいます。現在では保険適用の一般的な治療として知られ、日本でもDBSを受けられる施設は30施設以上あるそうです。

さらに、BCIの進化は続きます。2000年代初頭には、DBSに代表されるような「外部からの電気刺激→脳内のチップ」ではない技術が登場しました。

アメリカのサイバーキネティックス社の「ブレインゲート」といいますが、「脳内のチップが脳波を読み取り、外部のコンピュータをその通りに動作させる」。つまり、「脳のインターフェース化」です。臨床試験は、2004年ごろからブラウン大学との共同でスタートし、四肢麻痺の患者さんが考えるだけで「メールボックスの開封」、「照明のON/OFF」、「ロボットアームの動作」を行えることを確認。2012年にも同様の試験が行われ、患者さんの脳波をキャッチしたロボットアームがジュースを口に運び、世界中にインパクトを与えました。

BCIは、日本でも研究が進んでいます。アメリカ式の外科処置を施すものではなく、ヘッドセット方式です。先述した60年代のヘッドセット→70年代以降の脳内チップの流れには、「精度」が大きく関係しています。つまり、ヘッドセットでは脳波を読み取りづらいデメリットがあるということです。しかし、誰もが思うように脳内チップは手軽ではなく、また倫理的な問題もある。そこで、日本では「ヘッドセットの精度をいかに向上せさせるか」をテーマに、産総研や大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所、慶應義塾大学、金沢大学などで研究が行われています。

 

確かに、脳だけで意思疎通が行えたら便利ですね

ここまでで、BCIが医療の世界では現実的な技術だとわかったと思います。脳内チップ、ヘッドセットどちらにしろ、未来の治療法として普及するのは明らかです。しかし今、BCIが注目を集めているのは、実は医療の世界だけではありません。

テスラやスペースXで知られるイーロン・マスクは、2017年にNeuralinkという会社を立ち上げました。なんの会社かといえば・・・、そう脳内チップです。Neuralinkでは、「脳波とコンピュータ」や「脳内チップユーザー同士」のダイレクトなやり取りをめざすとしています。

また、Facebookも、「考えただけでテキストを入力できる」などを目的に、BCIプロジェクトを推進しています。先述したアメリカと日本での研究のように、NeuralinkとFacebookではチップを埋め込むか否かで違いがありますが、今、BCIは人間の拡張ツールとしても注目を集めているのです。

さて、スマホやPCのように、アップロードで人の能力が変わる未来。なんだか怖くもありますが、少しワクワクする気持ちもあるのではないでしょうか。もしかしたら、数十年後には、攻殻機動隊やマトリックスの未来が懐かしいと感じる生活がやってくるのかもしれません。

世の中を一変させるテクノロジーの急速な進化。私たちは、そのまっただ中に立っています。

 

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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