松田軽太の「一人情シスのすゝめ」Vol.1:脱Excelの為のデータベース活用法

松田軽太の「ひとり情シスのすゝめ」は、ひとり情シスを推奨しているのではなく、様々な事情によりやむなく”ひとり情シス/ゼロ情シス”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けいたします。今回は「脱Excel」のためのデータベース(DB)活用のお話です。

とても優秀で万能だからこそ、なかなか手放せないExcelですが、マクロを組もうものなら俗人化してしまい、Excelファイルを社内共有サーバーに置いたところで、情報の見える化には至りません。
今日は知人から「Excelで請求書を作成し、これと連携した請求一覧を管理したいのだが、なんとかならないか?」という相談を受けた時のことをお話いたします。

Excelで管理していた請求管理の例

では、Excelを用いてどのように作業をしていたのか見ていきましょう。
下記は明細情報を入力したExcelで作成した請求書の例になります。ご覧いただければお分かりだと思いますが、印刷すればそのまま請求書として使うことができるレイアウトで作られています。

ここまでは何も問題ないと思いますが、Excelで大変なのは請求一覧を作成する部分になります。

方法としては、別シートで請求書に入力したデータの一覧を作成するというのが、一般的なのではないかと思いますが、これが大変な作業なのです。このような場合、きっと皆さんも請求書からデータを読み込むためには、セル番号を直接リンクしているのではないでしょうか。

そのため請求書からデータを打ち直しする必要はないものの、この例のように商流単位で管理するような場合だと、商流が異なると別のExcelブックを作成していくことになり、その分だけExcelブックも増えていくことになります。
RPAなどを用いればこの作業を自動化することは可能です。しかしながら、見える化も苦手なExcelのためにわざわざRPAを導入するというのも“?(疑問符)”がつきます。

データベースでの請求管理の例

では、データベースを活用した場合、どうできるのかサンプルを見てみましょう。
今回、使用したデータベースはFileMaker(ファイルメーカー)です。1985年に産声を上げたデータベースアプリの老舗ともいえるファイルメーカーですが、カード型の平易さを残したまま、かなりの規模のデータベースまで構築することができ、また簡易DTP機能を備えていることから、ページデザインの自由度も高い製品になります。

どうでしょう?見た目の程は。当然ですが、Excelで作成した請求書と大きく違うことはありません。
今回の内容であればマイクロソフトのAccessやサイボウズのKintoneでも同じように作成することは可能です。
何を使うかは、利用規模、価格、必要機能などから見極めてください。

Excelとデータベースソフトは何が違うのか?

Excelでも請求データ管理を行うことはもちろん可能です。しかしExcelのセルには何でも入力することができます。商品CD用のセルに発注先CDを入力することもできますし、数量用のセルに単価を入力することも可能です。

例えば「入力規則」で「リスト」を設定することで、一覧表示されるデータだけから選択させるという制限をかけることができます。それらの入力間違えをExcelで防止するには、それなりに工夫が必要です。
そしてExcelを日常的に使っている人でも、そこまで入力制限をかけている人は少ないのが現実ではないでしょうか。当然ながら、入力制限を設定するのもかなりの手間と言えます。
データベースソフトの場合、Excelでいうところの列単位に「この項目は商品CD専用」といったように、設計段階から制限が掛かります。そのため商品CD用の項目(フィールド)に発注先CDが誤入力されることはありません。

データベースソフトを使う(DBを構築する)

では次に、データベースソフトを使ってどのように構築するか見ていきましょう。データベースを使うにはまずはデータを格納する入れ物であるテーブルを構築し、その上でそれらをレイアウトすることで帳票としての体裁が整います。
どんなデータを格納する必要があるのか、リストアップすることから始めましょう。

■テーブルを定義する

まずはデータベースにテーブルを定義する必要があります。
今回は4つのテーブルを作成しました。

①請求ヘッダー部
②請求明細部
③商品マスタ
④発注先マスタ

では、それぞれのテーブルの項目を見ていきます。

■請求ヘッダー部

請求ヘッダー部とは請求書の中で一箇所だけ入力すれば良い項目を集めたものです。
例えば、一枚の請求書の中で発注先が複数存在することはありません。
請求に必要な相手先情報や請求を管理する番号などの項目を請求ヘッダー部に設けます。

■請求明細部

請求明細部とは請求書の中で複数の入力を行う項目を集めたものです。
前述の請求書例のように、一枚の請求書の中で記載する商品はいくつもあることがわかります。
商品名や商品コード、個数、単価、金額などの項目を請求明細部に設けます。

■商品マスタ

商品を管理するための情報を設けます。
例えば商品で単価は決まっていることが多いので、商品マスタにあらかじめ単価を登録しておけば、単価間違えを防止できます。

■発注先マスタ

発注先を管理するための情報を設けます。
例えば、発注先の住所や商社ルートなどを発注先マスタにあらかじめ登録しておけば、住所や商社の間違えを防止できます。

■リレーションを設定する

データベースではそれぞれのテーブルに関係性を持たせるためにリレーションを設定することができます。
リレーションを設定することで、商品マスタから商品単価を自動で抽出することができます。
Excelで言えばVLOOKUPを思い浮かべると良いかもしれませんね。
VLOOKUPだと抽出するキー項目を他シートのキー項目に引っ掛けて情報を拾い出します。

しかしExcelだとコピーして列がズレたりすると、正しい情報を拾わないことがありますが、データベースではそういう事故は起こりません。

画面を作成する

では次に、データベースソフトで、データを入力するための画面や帳票を作成します。
ここ最近、UI/UXなどと呼ばれ重視されるようになりましたが、画面の設計次第で使いやすさが大きく変わりますので注意しましょう。

画面設計のイメージを以下に記載します。
ちなみにFileMaker(ファイルメーカー)はパワポのような操作で画面を作成するので簡単です。

■請求明細入力画面

この画面で入力するのは薄い黄色の項目だけになります。それ以外の項目は自動でデータがセットされる為、間違いが減ります。

■請求書発行

請求書をA4用紙に印刷するための画面になります。

■請求明細一覧表

請求データの明細を一覧表にした設計画面になります。

この画面設計で実際に一覧表示されたイメージは以下のようになります。

■商品マスタ

商品を管理するマスタです。
商品CDをキー項目として、商品名や単価を管理します。
データベースであれば、商品の画像も簡単に管理できます。

商品マスタの設計画面です。

この画面設計で実際に一覧表示されたイメージは以下のようになります。

■発注先一覧

発注先データの一覧表です。
「詳細」ボタンを押すと、より詳細な情報を管理できます。

発注先一覧の設計画面です。

この画面設計で実際に一覧表示されたイメージは以下のようになります。

■発注先マスタ

発注先ごとの詳細な情報を管理します。
住所から地図を自動的に表示することができます。

発注先マスタの設計画面です。

この画面設計で実際に一覧表示されたイメージは以下のようになります。

Excelだけで頑張らない方が仕事は楽になることもある

Excelはどのパソコンにもセットされているので、手軽に何でも管理することができます。
しかしExcelのセルには何でも入力できるため、管理するデータのデータ数や管理する期間が長くなると、整合性を保つのが大変になってくるという一面もあります。

もちろん自分で作ったExcel管理表であれば、どこに何を入力するのか把握しているので、整合性も問題はないかもしれません。
しかし、ある時、人事異動であなたが別の部署に移動することになったらどうなるでしょう?
あなたがいなくなってしまっても、きっとアナタの作ったExcel管理表は使われ続けます。
そうなった場合、あなたの作ったExcel管理表を他の人は正しく使うことができるのでしょうか?

データベースソフトの良い点は、誰が使っても同じようにしか使えないという部分にあります。
なぜならデータベースソフトは、特定の作業専用に作るから、作業の間違えが発生しにくいのです。

 

データベースソフトは難しくない

データベースと一口に言っても、数万人が同時に入力する大規模なものから、部署だけの数人で使う小さなデータベースもあります。
大規模なデータベースは、それなりに構築するにも知識が必要ですが、少人数で使うようなデータベースであれば、今では簡単に作成できます。

身近なデータベースとしては、Officeの一部としても提供されるマイクロソフトのAccessではないでしょうか。
但し、普段Excelは使えている人でもAccessを使うと「難しくて理解できない」という声を多く耳にするので、とっつきにくさがあるのかもしれません。
しかしながら、最近ではマイクロソフトのAccess以外にも、少人数で扱えるデータベースは増えています。
例えば、サイボウズ社のKintoneは「誰でも簡単に使えるデータベース」を商品コンセプトにしており、非常に簡単に使えます。

今回、使用したFileMaker(ファイルメーカー)もその歴史は古く、1987年にApple社からスピンオフしたClaris(クラリス)社が開発しました。(Apple社に買収されFileMaker社と社名変更したが、先日改めてClaris社に社名変更された)
当初はカード型DBでしたが、バージョンアップ毎に様々な機能を追加し、最新版は18になります。コードを書かなくてもアプリが作成できるプラットフォームとして「誰でも簡単に使える」ことを目指して開発されました。

初めてデータベースを使うのであれば、KintoneやFileMaker(ファイルメーカー)のように「誰でも簡単に使える」というコンセプトのデータベースを、まずは触ってみると良いのではないでしょうか。

 

※本記事は松田軽太様了承のもと「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。


松田軽太(まつだ・けいた)

とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。

ブログ『松田軽太のブロぐる』を運営。

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