松田軽太の「一人情シスのすゝめ」#5:開発未経験の情シスはローコード開発をやってみる

松田軽太の「ひとり情シスのすゝめ」、タイトルだけ見るとひとり情シスを推奨しているように思われるかも知れませんが、思いはまったくの”逆”。様々な事情によりやむなく”ひとり情シス/ゼロ情シス”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けしたいと思っております。

今回は「開発未経験の情シスさんでもできる業務システム作り方」と題し、ローコード開発とそのツールについてご紹介いたします。

開発未経験の情シスにはローコード開発がおススメ

皆さんの会社には情シス部門ってありますか? 「情報システム部はコンピューターシステムの専門家なんだから、チャチャっと業務システムを作っちゃうんだろうな」というイメージはありますよね。 でも、様々な理由もあり、現実は全然違ったりするのです。

そんな方におススメしたいのが、ほとんどプログラムコードを書かずに業務システムを作れる「ローコード開発ツール」なのです。 このローコード開発ツールは超高速開発ツールなどと呼ばれることもあります。

業務システムを作れない情シスがいる理由

その昔、会社の業務システムはオフコンと呼ばれる企業向けの専用コンピューターで業務システムが作られていました。
パソコンではなくてオフコンです。 オフコンとはオフィスコンピューターの略です。 例えば、IBMのAS400とかNECのExpress5800とかになります。

少し昔の映画に出てくるような黒い画面に緑色の文字でプログラムがコンピューターを思い浮かべてもらえば分かりやすいでしょう。

IBM i(AS/400)の基本操作について(参考URL、キー操作、代表的なコマンド、コマンドの探し方)|e-bellnet.com(AS/400 技術情報サイト)

本記事ではオフコンという言葉で統一して解説します。

1.COBOLによるブラックBOX化問題

さて、オフコンでの運用で多かったのはCOBOL(プログラム言語の一種)による業務システム開発でした。COBOL言語は今から70年くらい前に作られたプログラム言語ですが、実は今でも銀行や自治体などで使われ続けています。
オフコン運用時代の情シス部門は、このCOBOL言語を駆使して業務システム開発を社内で行っている会社が多かったのです。 言い換えるとシステム開発の内製化ができていたことになります。

しかしながら、この状況がいわゆる属人化ブラックBOX化という問題を引き起こしました。

野良Excelくらいなら末端業務の一部分だけの影響で済みますが、販売システムや在庫管理システム、はたまた生産管理システムなどの会社における事業の根幹を管理する基幹システムが属人化によってブラックBOXになってしまっては、事業継続に影響します。

また、オフコン時代はまだまだ手書き伝票などアナログ業務が主流だったこともあり、少しづつ業務がコンピューター化されていました。 なので、オフコンの中に小さな業務システムがたくさんできるようになったのです。 しかも、それらは各システム間での連携までは想定されずに構築されており、その後サイロ化されていくことになります。

このような状況であっても、これらが大きく問題視されることはなく、数十年の月日が流れていきました。

しかしながら、COBOL言語による業務システムの内製化で、属人化・ブラックBOX化した基幹システムが問題視されるようになりました、2007年問題です。 これは基幹システムを内製化した当時の情シス部長や責任者が大量に定年退職を迎えることになったからです。

一部のIT系企業を除き、今も昔も経営陣の多くはITオンチが多いといってもか過言ではないでしょう。 これだけスマホが普及し、手のひらの上にコンピューターが収まる時代となっても、ITに疎い経営陣が多くいるのですから、スマホがない時代であれば、尚のことです。

ましてやCOBOL言語でDIYのように構築されたシステムには仕様書なんてないことも多くし、あったとしても、数十年前に書かれた資料なので、当然のごとく陳腐化しています。

既存の基幹システムの最新仕様は、情シス部長のアタマの中にしか存在してないなどということも。

このように会社の経営基盤となる基幹システムが属人化していた事実が大きな問題になってきた時、ERPパッケージという黒船が情シス界隈にやってきました。

2.ERPパッケージの大流行

ERPパッケージは、データベースが統合化され、業務手順も標準化されているので、ERPパッケージに業務を合わせれば基幹システムが短期間で構築できる時代になったのです。

あらかじめ業務の標準機能を搭載したERPパッケージを導入すれば、企業の競争力は飛躍的に向上すると期待され、多くの企業がERPパッケージを導入しました。

ERPパッケージを導入するには、現在の業務とパッケージソフトの機能を摺り合わせて、ギャップがある部分の機能だけを作れば良いのですから開発時間も短縮され、安価に基幹システムを構築できるのです。

しかしながら、COBOLによりブラックボックス化してしまっていた基幹システムをERPパッケージに載せ替え、不足機能をカスタム開発をするとなった時点で内製化を行わず、SIer頼みとしてしまった情シスは、社内システム開発の現場から一歩遠ざかってしまったのです。

3.情シス人員の大削減時代

ERPパッケージの導入が進み出した後の2009年、世界経済はリーマンショックに襲われました。 そのため、急激に経営状況が悪化した企業は、直接的な利益を生まない間接部門の人員整理に取りかかりました。 当然、情シス部門もその対象になりました。

業務システムを内製化していた時代は、情シス部門は会社にとって欠かせない人材なのでしょうが、ERPパッケージの運用下では「情シスはITベンダーとの窓口業務なので、最小限にとどめる」という風潮になり、今、話題の「ひとり情シス」「ゼロ情シス」が出来上がったのです。

このような背景もあり、自らの力で業務システムを作れない情シスという存在もあるのです。

突然訪れた『2025年の崖』ブーム

2018年に経済産業省は『DX-2025年の崖』という、古臭くなった情報システムが経営の足を引っ張り、放置すれば12兆円の経済損失になると警告しました。 多くの企業に導入されたERPパッケージそのものが保守切れとなり、今度は経営の足かせになりました。
とはいえ、これも実はITオンチの経営陣が『コンピューターなんてよく分からんから』と放置した結果ではあるのですが。

そしてDXレポート『2025年の崖』の報告書では、これからの企業経営は新興国との競争が激化するので、より変化が激しい時代になるとも警告しています。

そうなると業務システムも素早く変化に対応する必要があります。

DX時代の情シスはアジャイル開発による内製化が求められる

変化の激しい経営環境へ業務システムを対応するのであれば、アジャイル開発を導入する必要があります。

しかし、ERPパッケージの導入と引き換えに業務システムを内製化するノウハウを捨て去った情シス部門が、今さら業務システムを内製化することなど容易には出来ないのが現実でしょう。

ましてや『ひとり情シス』であれば、基幹システムの安定稼働だけで、てんてこ舞いなハズです。 とはいえ業務システムのアジャイル開発は時代の要請であり、これから必須になるでしょう。

幸いなことにアジャイル開発に最適なローコード開発ツールが増えつつあります。

 こんなにあるローコード開発ツール

アジャイル開発は素早さを求められます。 なのでアジャイル開発に向いている開発ツールの多くは、ほとんどプログラムコードを書かずに業務システムを作れます。

これをローコード開発ツールとか超高速開発ツールと呼んでいます。

代表的なところでは、GeneXsusWagbyOutsystemsWeb Performerといったところでしょうか。

いずれの開発ツールもほとんどコードを書く必要がないので、開発ツールの操作方法は比較的すぐに習得できるでしょう。
しかし、開発ツールの操作方法が分かっても業務システムは作れません。 業務システムの構築で一番、大切な能力は『業務部門がどんなシステムを求めているのかを理解する設計力』なのです。 いわゆる要件定義をまとめあげる能力が非常に重要なのです。

まずはデスクトップ型のツールで小さなシステムを内製してみる

またこれらのローコード開発ツールの導入には数百万円の費用がかかります。 ツールの使い方を習得するにも専門教育が必要になるので、講習自体に数十万円掛かります。 となると使いこなせるかどうかも分からないツールの導入に大きな覚悟が必要になります。 多額の導入コストをかけても開発ツールを使いこなせないのでは、情シスの評判は劇落ちてしまい、経営陣からは『この役立たず!』と口汚い言葉で罵倒されるのは容易に想像できますよね? そう考えるとけっこうなバクチを打つことになります。

であれば、まずはデスクトップ型の開発ツールを導入して、小さく内製化の勘所を養う方が良いでしょう。

小さな開発をACCESSやFileMakerでやってみる

デスクトップ型で小さく開発できるツールの代名詞といえば、ACCESSですね。 ACCESSの大きなメリットは書籍は山ほどあるし、ネットでもググれば記事もたくさん見つかるという点でしょう。

そういう意味では非常にとっつきやすいと言えます。

ですが、開発経験がまったくない人からすると、ACCESSは敷居が高いと感じる人も多いのではないでしょうか? なので「またか」と思うかもしれませんが、まずはFileMakerで業務アプリを作ってみるると良いと思います。 なんでACCESSはなくFileMakerなのかというと、FileMakerのほうが圧倒的に簡単だからです。 FileMakerってよくも悪くもなんとなく作っても、なんとなく動くのが大きな特徴です。 つまり動くアプリを容易に作れるのです。

以前の記事にも書きましたが、ACCESSはなんとなく動くアプリが完成する前に多くの人が挫折してしまう姿を見てきました。 ACCESSは1万5000円程度、FileMakerは6万円と価格差はありますが、いくら安くても使い方が分からないツールを買うのは無駄になります。

しかしながら、両方買っても7万5000円くらいなので、両方試してみるというものアリだと思います。 少なくとも数百万円も掛かるローコード開発ツールを導入するよりは全然、安い買い物です。 またACCESSもFileMakerも「データベース、画面、帳票、スクリプト」が一体化しているのでMySQLなどのデータベースが不要です。 そういった準備の手間の少なさも業務アプリ作成の初心者には大切な部分でしょう。

実際のところ、どのローコード開発ツールを使っても構わないのですが、まずは「業務システムの開発ってこうやればいいのか」という経験を積むことが大切です。 要するに業務システムを作るために重要なのは要件取りまとめるチカラです。 そして要件からデータベースの構造(データモデル)を考えるチカラになります。

これらは、どのツールを使うのであっても必要な能力といえます。 そう考えると、まずはデータモデリングについても学習しておいた方が良いでしょう。

業務ハックのできるコーポレートエンジニアに!?

昨今、「業務ハック」という言葉も見られるようになりましたが、まずは自分でやってみるというのはとても大事だと思います。
そしてその「まずはやってみる」が簡単にできる環境が今はあります。 まずは自分の手で業務アプリを作ってみることで、視野が広がり、システム構築の勘所が掴めるようになるのです。

そうなれば業務システムを外注する場合でも、見積もりや設計内容が適正なのかどうかを自分なりに判断することができるようになるでしょう。

皆さん、是非、業務アプリの作成にトライしてみてください。

※本記事は松田軽太様許諾の元、「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。


松田軽太(まつだ・けいた)

とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。

ブログ『松田軽太のブロぐる』を運営。

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