松田軽太の「一人情シスのすゝめ」#11:複雑な関数やVBAをやめたら属人化Excelは無くなるのか?

松田軽太の「ひとり情シスのすゝめ」、タイトルだけ見るとひとり情シスを推奨しているように思われるかも知れませんが、思いはまったくの”逆”。様々な事情によりやむなく”ひとり情シス/ゼロ情シス”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けしたいと思っております。

突然ですが、近ごろネットを開くとアチコチで「脱Excel」と謳っているソフトウェアやサービスの広告が目に入ることが多いと思いませんか?
「脱Excel」が言われている理由は属人化が問題視されているからです。
ちょっとした集計だったらまだしも、複雑な関数やVBAを使ったExcelに基づき作られた業務システムは、作った本人でしか分かりませんし、この手のもので設計書があることはほとんどありません。故に他人がされれない存在になってしまいます。

ということで、今回は『業務システムの内製化』についてのお話です。

属人化Excelのもたらす危機

その人が永遠にその職場で働いてくれるのであれば、問題にはならないですが、結婚や出産、いずれは定年という終わりがくるし、あるいは考えたくはありませんが、事故とか病気で出勤できなくなる可能性だってあります。
もし、そうなってしまった時、業務システムの一部になっているExcelを操作・運用できる人が誰もいなければ、最悪はその職場の仕事そのものが止まってしまう可能性を秘めているのです。

例えば、です。

その属人化してしまっているExcel(以下、俗人化Excel)で工場の部材管理をしていたとします。その部材管理表を正しく働かせるには、部材の入庫、在庫、出庫といった日々の部材の動きをExcelに入力して管理をしなければ、正しい数字にはなりません。
もし仮にそのExcelを唯一更新できる人が事故に遭って2ヶ月入院したとしたらどうなるでしょう?
今日の正しい部材が分からず、工場は大混雑に陥るでしょう。

その結果、何が起きるでしょうか?
工場の現場では部材の欠品による生産停止を恐れて過剰に部材を購買部門に発注依頼するでしょう。
必要以上に購買した部材は過剰在庫となり、資金繰りにも影響することにもなります。

ではここで質問です! この大混乱を引き起こしたのは、事故で入院した属人化Excelを作った人なのでしょうか?

当然、違いますよね?
根本的な問題は長年、属人化Excelを放置していた組織・マネジメントの問題です。
つまりは、マネジメントをすべき管理職が『このままこのExcelを放置してたら問題である』と気がつきながらも、管理して来なかったツケが廻ってきたのです。

そもそも本当に属人化してるのか?

自分自身もいろんな職場からこんな相談を受けることがよくあります。

「業務に必要なExcelがあるんだ。担当者が退職することになって新任に引き継いだんだけど、どうも操作方法が分からないっていうんだ。でも、そのExcelはなにやら難しいことをやってて、俺が見ても何をしてるのかサッパリ分からない。だからそのExcelの使い方を教えて欲しい。」

・・・とこんな感じの要望をされたりします。

まぁ、今まで見たことも触ったこともないExcelの使い方を教えろというのが、こちらからすればむちゃぶり以外の何ものでもありませんが、会社の運営に支障をきたすというのであれば、断るワケにもいきません。
しぶしぶ問題となっているExcelを見てみると意外なほど複雑になっていないことも多々あります。

実は引き継いだ側がExcel関数の知識不足だっただけで、属人化と忌み嫌われていたExcelには何も問題なかったのです。

Excel関数の知識がない人からしたら、もしかしたらVLOOKUP関数ですら、呪文のように見えるのかもしれません。
ましてやSUMIF関数やIF文のネスト(入れ子)なんか見たら呪いでもかけられるのかと尻込みしてしまうでしょう。

そう考えると属人化Excel問題って実はただ単に初歩的なExcelの使い方を知らないだけだったりもするのです。

Excel教育を行うべき理由

話は変わりますが、皆さんの会社や職場ではExcelの使い方を社員教育で取り入れていますか?
ほとんどの職場ではExcel教育は行ってはいないのではないでしょうか。

管理職の方からよく耳にするのは「Excel教育? そんなことに使うお金はありません! そもそもExcelなんか”習うより慣れろ”で使っているウチに自然に覚えるものでは? だいたい自分もExcelの教育なんか受けなくても、Excelぐらい使えるようになりましたから。」というような意見です。

そう、この管理職のようにExcel教育を受けなくてもExcelは使えます。ただし、ワープロやちょっとした計算機代わりのような使い方に限定した場合です。
Excelの多くは、昔ながらのワープロみたいな使われて方をしていることがとても多いです。
Excelを方眼ノートとして使うだけならそれでも良いでしょう。しかし、日々、行う売上実績表や在庫表といった定形集計表はワープロみたいな使い方では、作業の効率化は見込めません。

Excelはとても優れた高機能な表計算ソフトです。表計算というくらいだから、計算が得意なソフトなのです。
しかし、いくら計算が得意なソフトとはいっても、計算しやすい使い方をしなければ計算なんかできません。
Excelという便利な道具を効果的に使うのであれば、当然ながら正しい道具の使い方を学習させる必要があるのです。
それによって毎回3時間掛かっていた集計が10秒で終わるようになるのですから。

では、どんなレベルであればExcel講習を受けさせるべきなのでしょうか?

使える関数の種類を調べる

一番てっとり早いのは、Excel解説本を入手し、関数を覚えることです。
私自身は、Excel解説本として35万部を誇る書籍『たった1日が即戦力になるExcelの教科書』を勉強の為に購入しました。

このような解説本を活用し、Excelで仕事をするなら、絶対に知っておくべき必須の6大関数の使い方を調べます。

<Excelで仕事をするなら、絶対に知っておくべき必須の6大関数>

      • IF
      • VLOOKUP
      • SUMIF
      • COUNTA
      • COUNTIF
      • SUM

この中に一つでも知らない関数があるようであれば、(ワープロや簡易計算機的な)非効率なExcel表となっている可能性が高いです。

まずはこの6つの関数を知っているかどうかが、Excelスキルを測る上での”リトマス試験紙”といえるかもしれません。

Excel教育は投資だと考える

「Excel教育?そんな金がない!」と考える人はExcel教育に掛かる費用をコストと考えているからでしょう。
しかし、今やExcelは現代のCampusノートのような存在です。(ちょっと違うかもしれませんが…w)

Excelの正しい使い方を知らないということは、ノートの書き方が分からないというレベルというと大げさかもしれませんが、Excelの持っている機能から考えれば、あながち外れとも言えません。

なので、Excelを使うレベルが低い会社であれば、人材育成の投資と考えて教育を実施すべきです。
(真逆の戦略で素直にExcelを使わないようにしてしまうというのもありますが)

お金がないならオンラインExcelセミナーを活用する

もしアナタがExcel実務者で「ウチの管理職には、そんな理屈は通用しないよ!」という場合は、自腹でもExcel学習することを考えるべきです。
会社でカフェテリアプランなどの研修にも使える補助がある場合はそれを活用するのも一つです。
また、無料でVBAセミナーなどを開催られているので、”こくちーず”や#TECH PLAY”などをチェックするのをお忘れなく。

しかしながら、今オススメなのは「オンラインExcelセミナー」です。
リアルイベントは感染リスクもありますから、あまり行きたくないですよね。

「Excel オンラインセミナー」でググってみてください。きっと多くのセミナーを見つけられることでしょう。
無料セミナーや有料セミナー、オンラインセミナーなど様々なものがあります。
自分のレベル、スタイルに合ったものを探すのが一番ですが、私のお勧めは「すごい改善・動画セミナー」になります。
その一番の理由は、会場受講だと53,400円の講習にもかかわらず、月額330円で受講できるからです。
課金停止、アカウント削除もマイページから行えるので、途中解約の不安も軽減できます。

オンラインセミナーにも様々ありますので、一度比較してみるのも良いのではないでしょうか。

誰も属人化させたいワケではない

「属人化Excelをなんとかしろ」と言ってる管理職がいるかもしれませんが、属人化と揶揄される彼らは、彼らなりにどうにかして業務効率をあげようとできることで頑張っただけ。
その結果、複雑になってしまったのです。

しかしながら、これは「属人化は悪だ!」と文句いう管理職が、管理せずに放置した結果でもあるのです。
属人化に問題を抱える管理職の方は、現状に至る過程を振り返ることもせずに、「属人化ガー!」と叫ぶのではなく、まずは担当者の努力に報いるべきかもしれません。

実際、それらのExcelはその業務の中では、なくてはならない存在になっていることが多いのですから。

属人化Excel問題の多くは、Excelの使い方の未熟さが生んだ悪しき幻なのか?

この属人化問題、このように考えることもできます。

少しExcelの基礎を学習すれば、基本的な関数の使い方は分かるのに、それすらも怠った人たちが「こんな複雑なExcelはアイツしか運用できない」と吹聴していると。

”複雑”の解釈を誰が行うかによって、別の結果となることもあるでしょう。

「僕は昔、BASICを学んだのでプログラミングはできるけど、なんで今のプログラムはPythonで書かれているのか?」と聞いて、皆さん”何言ってんだ”と思われるのではないでしょうか?
確かに他人が構築したExcelシートは参照データがどこにあるのかがわかりにくいなど、触りにくいのも事実です。
しかしながら、VBAを使っているから複雑なのか、(自分が)知らない関数が使われているなのかという視点だけでなく、部署にそれらを扱えるスキルの人が他にいないからという問題の本質を理解した上で、今後どうしていくべきかを考えるべきなのです。

 

※本記事は松田軽太様許諾の元、「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。


松田軽太(まつだ・けいた)

とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。

ブログ『松田軽太のブロぐる』を運営。

 

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