【TechCrunch Tokyo2018レポート】未来を築く日本最大級のスタートアップの祭典!

2018年11月15~16日、渋谷ヒカリエ内ヒカリエホールで日本最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」が開催された。情シスの皆様に直結するイベントではないかもしれませんが、世の中の動向として頭の片隅に入れておくことで、コミュニケーションの糸口になるかもしれません。

ご存知、同イベントの主催は「TechCrunch Japan」。ITの聖地・シリコンバレーで2005年にスタートしたITメディア「TechCrunch」の日本版であり、TechCrunch Japanが日々発信する情報は、ITの今と未来をみごとに描き出す。記事のチェックを日課としている人も多いであろう。

今年で8年目を迎えたTechCrunch Tokyo。目玉はやはり「スタートアップバトル」だ。予選を勝ち抜いた創業3年未満のスタートアップが集い、それぞれにビジネスモデルとビジョンの優位性・新規性・革新性を聴衆に訴える。

スタートアップが、このピッチバトルに参加する意義は非常に大きい。100万円という優勝賞金だけではなく、登壇自体がユーザー獲得の大きなチャンスであり、また、来場者には新規事業立案の担当者も多く、事業提携の期待値も高い。さらに、毎回、投資家や本家TechCrunchの編集者が審査員として参加。資金調達や世界アピールも期待できるからだ。まさにイノベーションがばくばくと脈打つ場なのである。

今回のバトルには100社以上の応募があったという。ファイナリストとしてTechCrunch Tokyo 2018に登壇したのは20社。うち6社がファイナルラウンドに進出しバトル王者が決定された。情シスNavi.では、みごと優勝をつかみ取った王者「MUSCA」をはじめ、ファイナルラウンドに進んだ6社それぞれのビジネスを紹介・検証する。

ファイナルラウンド進出のスタートアップを一挙紹介!!

【BioTech】 “サラブレットなイエバエ”が世界を救う「MUSKAシステム」−株式会社ムスカ

TechCrunchTokyo2018スタートアップバトルでみごと王者となったムスカは、「イエバエ」を活用した「究極の循環システム」を事業としている。

同システムの特徴は2つ。イエバエによる「有機肥料」と「飼料」の継続的生産だ。これまで、牛や豚の「家畜糞」は、農産物を育てる堆肥として活用されてきた。だが、堆肥は落ち葉などを配合し微生物による発酵でつくられるため、一般的に生産まで2〜3ヶ月を要する。一方、同システムでは微生物の代わりに、イエバエの幼虫が家畜糞を食べ酵素分解。一週間という短期間で堆肥化が行われ、幼虫の排泄物は良質な有機肥料となる。

また、成長が進みサナギとなった幼虫自体も、良質な飼料として活用できる。つまり、人手や処理工程をかけず有機肥料と飼料を同時生産する「100%バイオマス・リサイクルシステム」なのである。また、幼虫の出す消化酵素には殺菌効果もあり、従来堆肥化で発生してきた汚臭も抑えるという。

ムスカのビジネスモデルは、プラントを建設し集められた家畜糞などから肥料と飼料を生産。これを肥料会社、飼料会社に販売と非常にシンプル。だが、そのエンジンとなる「イエバエ」は、まさにサイエンスの結晶だ。

同社のイエバエの“故郷”は、45年前の旧ソビエト連邦。同国の宇宙開発事業の一環で、宇宙船内での排泄物の処理を目的とした「食料の培養リサイクルシステム」の確立から行われたイエバエ研究だった。研究は開発事業の頓挫と旧ソ解体でストップしたが、それをムスカの前身の会社の代表が買い取ったのだという。そこから現在まで、1,100世代交代におよぶ品種改良が行われ、「MUSCAシステム」として実用化が実現した。

この特別なイエバエは、普通のイエバエと比較し「成長速度が速く」「高密度で飼育しても死ににくく」「一度に大量の卵を産卵する」特徴を持つ。さらに、幼虫が生み出す肥料は、生産物に「成長促進」「糖度の増加」「根の張りをよくする」「生産量の増加」、土壌に「抗菌作用」などの効果を。また、飼料となる幼虫は、養殖業において、魚の「餌の食いつきの向上」「免疫力向上」「ストレス低下」といった効果を与える。これらは大学との共同研究により確認済であるといい、畜産業・養殖業に与えるインパクトは大きい。

また、同システムは「天然資源枯渇の回避」にも期待できる。イエバエ飼料は、世界的に養殖業の飼料として利用される「魚粉」の代替になり得るからだ。

現在の魚粉の原料はイワシが一般的だが、その漁獲量は世界規模で減少が進む。しかし、中国をはじめとした新興国での水産物消費量増加から魚粉の需要は拡大しており、乱獲による天然資源の枯渇、それに伴う他の海洋生物への影響が懸念されている。一方、同社のイエバエ飼料であれば安定供給が可能。上述の食いつき向上などのメリットから、魚粉代替としての普及も十分に期待できるという。

地球から搾取しない社会の実現。その壮大なテーマを、同社は“サラブレットな”イエバエで、めざす。

【HealthTech】 患者/病院と介護施設のマッチングを行う「kuraseru」−株式会社kuraseru

「患者にとって退院することは、果たしてハッピーか?」、という問いから、kuraseruのピッチは始まった。

今や40兆円超えが当たり前となった医療費。国の財政を圧迫するその削減策として、病院は患者を早期に退院させる傾向にある。しかし、蓋を開けてみれば、自宅療養・介護が困難で、なお早な退院勧告に“おいてきぼり”をくらう患者が出現している。冒頭の一声は、この現状ゆえのメッセージだろう。

上記傾向から近年、「医療ソーシャルワーカー」が病院に在籍。退院支援として、患者の状態に合わせた転院先の相談を行うようになった。しかし、転院先探しは容易ではなく、他の病院はもとより、とくに介護施設探しは難航しているという。この課題を解消するのが「病院」と「介護施設」をマッチングするシステム「kuraseru」だ。

kuraseruは、「どこにどんな施設があるか」「施設内容や入居状況はどうか」など、ソーシャルワーカーが欲しい情報をオンラインで提供。PCなどから空き状況の確認やめぼしい施設へのDMも手軽に行え、さらに患者の退院日を入力しておくと施設側からアプローチを受けられる機能もある。また、有資格者のソーシャルワーカーで構成されたサポートチームも用意しており、詳細なニーズにもきめ細かく対応する。患者の転院先探しに病院のソーシャルワーカーが費やす時間は平均30時間だそうだが、これをkuraseruは2.5時間まで圧縮する。

一方、気に掛かるのが施設だ。“空きがなく、いつも入居待ち”とは、近年の介護施設の代名詞になっている。いくらソーシャルワーカーが手軽に探せるようになっても、施設数が充実していなければ、そもそも意味がない。

これに対し、登壇の代表取締役・川原大樹氏は、「つぶさに見れば空きのある施設が点在している。そういった施設を見つけられないのは、病院側と施設側の情報格差にある。kuraseruでこのような機会喪失をなくしていく」と、話していた。

ビジネスモデルは、導入・利用ともに無料。病床数に合わせた病院へのサブスクリプション課金と、施設からの一送客あたりの成果報酬でマネタイズしている。現在、神戸市で展開しており、市内病院の30%のシェアを獲得。利用病院数の増加に合わせ登録施設数も伸びているという。

【Farm Solution】 養豚経営の最適化を実現するソリューション「Porker」−株式会社Eco-Pork

養豚経営の最適化を行い畜産農家の生産性を高めるクラウドシステムがEco-Porkの「Porker」だ。

意外だが、2021年以降、豚肉の需要と供給のバランスが崩れ、価格は今よりも40%以上上昇。気軽に豚肉を食べられなくなる可能性がある。そのため従来の生産方法は今すぐ見直すべき、なのだという。

この未来課題に向けたソリューションをPorkerは提供する。PCやタブレットなどのデバイスに映し出されたアイコンをタッチし、簡単な入力を行うだけで農場データを可視化してくれる。また、Porkerに蓄積され更新されていく教師データから農場成績を見える化。生産性向上のための繁殖・肥育管理の問題点をグラフなどで表示する。さらに、作業管理やHACCP計画書で決定した定常業務を確認できるスケジューラー機能やIoTセンサーによる農場の自動監視サービスもある。

シェアについては開拓の最中だ。BSEでトレーサビリティへの関心が高まり対策が進んだ養牛とは異なり、ITスキルやIT活用による管理や生産性向上に対する養豚農家の関心はまだ低く、長年の勘を頼りに1万頭の豚を2名で管理している農場もあるという。今後の啓発と事例の創出が鍵となりそうだ。

同社が描く未来には、食料問題の解決といったテーマもある。豚の飼料として米が用いられているが、その消費量は6億トンに上り、世界のコメ生産量4.8億トンの1.3倍にあたる。同社はPorkerを足がかりに、この削減もめざしていくという。ムスカ然り、このような一次産業へのソリューションは、今後より熱を帯びてくるのではないだろうか。

【Doron】 独自重心制御技術「4D Grabvity」でドローンに革命を起こす−株式会社エアロネクスト

ソフトありきのビジネス、それはドローン業界も同様だ。飛行時間や安定性、速度などは、確かにソフトウェア制御によって改善されてきた。しかし、エアロネクストは、ハードの技術革新でドローンに革命を起こそうとしている。

同社の「4D GravityTM」は、これまで一体構造だったドローンを「飛行部」「搭載部」に分け、それを、貫通ジンバル構造のまったくあたらしい重心制御技術がつなぐ。これにより、飛行部が風などの影響を受けても、カメラや荷物を積む搭載部は影響を受けない。なみなみ水の入ったコップを強風のなかでも、突風に吹かれても、こぼさずに運べるイメージだ。またこの構造により、飛行で生じる部品のストレスも軽減し、燃費・機動力も向上できるという。

同社のビジネスモデルは2つ。VR撮影向け、デリバリー向け、検査向けなど、各セグメントに4D GravityTM搭載ドローン「Nextシリーズ」の販売を行う。直近では、100㎞以上の長距離物流を実現した「Next VTOL」の開発が発表された。そしてもうひとつは、「海外へのライセンス販売」だ。たとえばCPUのインテルのように、ドローンに欠かせない制御技術として4D GravityTMをライセンス展開していく。審査員からは「このユニークな技術を、ドローン大手から守れるか」との問いに対して、「CIPO(最高知財責任者)が社内におり、すでにコア技術に関しては80項目、周辺技術を含めると200項目近くの特許を取得している」と話した。日本発の制御技術が、ドローンを次世代に誘う可能性は高い。

【LabTech】 研究者と企業をつなぐプラットフォーム「LabBase」−株式会社POL

産学連携の素地は以前からあるが、大学の基礎研究と企業の応用研究が完全に融合し大きなイノベーションを生んだ事例は、残念ながら多くない。また、近年、日本の研究市場は停滞しており、論文数ランキングは年々低下しているという。そこにはヒト・モノ・カネ・情報さまざまな問題があるとし、POLはここを革新し、あらたな市場の構築をめざす。

同社は「LabBase」と「LabBaseR &D」という2つのサービスを展開している。LabBaseは大学院生などの理系人材と企業をつなぐプラットフォームであり、これまで推薦やOBの紹介で就職先を決めていた理系人材を、直接企業がスカウトできる。一方の登録理系人材も、さまざまな企業情報を見ることができ、広域から自分のスキルを活かせる就職先を探せる。現在、登録理系人材は8,000名以上で、うち28%が旧帝大の在籍だという。またユニークなのが、登録人材の集まり方だ。全国のコアメンバーが、研究室の訪問や大学でのイベント開催など、オフライン活動を行い、それが登録数に直結しているのだという。LabBaseは、企業の利用は有償となるが、1年半で100社と好調。MRRは1,000万円、月次20%で成長しているそうだ。

一方の「LabBaseR &D」は、研究者のデータベースだという。上述のコアメンバーや登録理系人材を通じ広域から研究者情報を集めており、現在では企業とのマッチング事例も生まれている。

同社は「LabBase」「LabBaseR &D」の両輪で事業をスケールさせ、海外展開も行う。そうして、築かれた広大なネットワークを築き、「研究者の能力を最大化させ、科学と社会の発展を加速させていく」としている。

【HR Tech】 新しくより豊かな労働市場をつくるLGBT向け採用支援−株式会社JobRainbow

ようやく認知が進みはじめた、性的マイノリティを表す「LGBT」。その雇用環境の改善は、官民を挙げて「誰でも働ける社会」をめざす日本にとって、今こそ真摯に向き合うべき事案だ。JobRainbowは、LGBTの就職支援を事業としている。

LGBTは日本において現在、13人に一人。人口に換算すると950万人に上る。しかし一方、「エントリシートの性別欄を埋められない」「カミングアウトしただけで拒絶された」など、世の中の理解は進んでおらず、雇用環境は整っていないという。この状況のなか、JobRainbowはLGBT向けリクルーティングプラットフォーム「JOBRAINBOW」、LGBT向け求人サイト「ichoose」の開発・運営、企業向けのLGBT研修・コンサルティングを介し就業/雇用促進支援を行っている。

JOBRAINBOWでは、LGBTが働きやすい企業を見つけられるさまざまな情報を公開。ichooseでは、「LGBT対応の社内制度がある」「LGBTの先輩社員がいる」「だれでもトイレがある」「制服の男女別」などの項目から求人を探すことができる。加えて、カミングアウトの範囲を人事のみ/オープンにするといったエントリー時の詳細な選択や、キャリアアドバイザーへの相談も可能だ。また、求人においても、LGBTに理解のある企業のみに限定し掲載しており、マクロソフトや資生堂、ソフトバンク、楽天など大会社も名を連ね現在300社ほどだという。同サービスは順調にスケールしており、月間アクティブユーザーは12万人、累計で70万人を数える。

同社は現在、LGBTの就活をドメインにしているが、今後の展開は多岐にわたる。LGBTの結婚・金融・住宅・介護など、さまざまなライフイベントにおける支援を行っていくとし、LGBTの生活のインフラとなるプラットフォームをめざす。

世界で渦巻くスタートアップの波

以上、ファイナルラウンドに進んだ6社を紹介した。最後は、TechCrunch Tokyo2018の開幕で、TechCrunch Japan編集統括・吉田ヒロ氏がスピーチした、世界のスタートアップ市場について触れておく。

近年、スタートアップ市場が活況なのはフランス、イスラエル、アメリカだという。フランスでは、スタートアップは企業数全体の10%に満たないものの、新規雇用数の過半数を占める。その背景には、政府が“フレンチテック”と銘打ち、スタートアップを海外に発信しているところが大きいと考えられる。続く、イスラエルでは、軍事技術から派生したサイバーセキュリティ分野、モビリティ分野のスタートアップが存在感を大きくしている。また、医療分野も賑やかで、政府は国を挙げてスタートアップの海外発信に力を入れている。アメリカでは、医薬品・バイオテック分野のスタートアップへの投資が加速。2018年で140億ドルに達している。さらに、CVCの投資も積極的になっており、その額は400億ドルに上るとみられる。また、これを背景にしてVC投資も加速。総投資額は1000億ドルに上ると推測されており、その規模は日本市場の36倍に達する。

他方、日本でも投資は加速しており、先日ソフトバンクがコワーキングスペース事業を行う米「WeWork」に30億ドルの投資を行った。今後、国内スタートアップの活性化が期待される。

以上となるが、2018年6月、経済産業省はあたらしいスタートアップ支援策をスタートさせた。2023年までに時価総額10億ドル以上のユニコーンの創出を目標にかかげているそうだ。すでに、「J-Startup」として92社が選定されており、世界に勝つ企業への育成支援が行われていく。国内スタートアップ市場は、今後日一日と熱を帯びてくることだろう。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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