【IT人材を探る】日本のエンジニアの給料は高いのか、安いのか

 


お金に不満を抱くエンジニアは確かにいます

私の幼なじみの一人にちょっと変わった経歴の人物がいます。高校卒業後、医薬系の専門学校に進学。しかし何を思ったか就職はせず、大学の夜間部へ編入。その後、大学院で物理を専攻し研究所を経て、京都のエンジニア派遣会社へ。IT知識やプログラミングなどのスキルを身につけ、そして三年前、34歳の時に近年IT化を急速に進めてきたとある業界の大会社に就職。現在、AI系のエンジニアとして活躍しています。

そんな彼が、口癖のように話すのが”お金の話”。「給料が少ない」と怨み節です。仮にも大手なんだから、そこそこの額をもらっていそうですが、彼にとっては「30歳まで学び続けた自分のスキル/技術が、正当に評価されていない」とのこと。また、少しいらだったように、立て続けにこうも話します。”海外であれば、こんな額じゃない”・・・。

ここでいつも私は「じゃあ、海外へ」と思ってしまうのですが、考えて見れば確かに、最近ニュースやウェブでもよく耳にするIT人材の待遇(給料)の妥当性について。そこで今回は、彼の不満から、エンジニアの給料について考察してみましょう。

日本のエンジニアは平均どのくらい稼いでいるのか?

まず、冒頭の彼が話したお金について。これは、日本と海外のエンジニアの平均年収を比較すれば検証は簡単そうです。まず日本のエンジニアから見ていきましょう。

参考にしたのは、経済産業省が2017年8月に公表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」。まさに今回のテーマにぴったりですが、なんとこの資料は「IT人材の具体的な給与水準をはじめて大規模に公的調査したもの」だとか。調査対象もIT人材5,000人とあり、なかなか信ぴょう性が持てそうです。

参考:

http://www.meti.go.jp/press/2017/08/20170821001/20170821001-1.pdf

さっそく平均年収を見てみると、「592.2万円」。この値はエンジニアのみではなくプログラマーも含めたもので、さらに「インターネット関連企業」に勤める人材とあります。このほかにも、エンジニア/プログラマーの平均年収には別項目もあり、「顧客向けシステム関連では593.7万円」、「組込みソフトウェア関連では603.9万円」、「ソフトウェア製品関連では568.5万円」。さらに、システム基盤設計などを行う高度エンジニアは「779.2万円」とも。ただエンジニアのなかでもこれは一部の業種のため、平均年収は570万円〜590万円でよいようです。


さて、海外はどうか? と、その前に「業種別平均給与との比較」も気になったのでチェック。総務省の「平成29年分民間給与実態統計調査」が参考になりました。

参考:

https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2016/pdf/001.pdf

日本の給与所得者の平均給与(ボーナス含む)は「422万円」。これは男女平均であり、男性は521万円、女性は280万円とあります。女性エンジニアは少ないと聞くので、521万円との比較でよいでしょう。また、別ページには「業種別の平均給与」のグラフもありました。最も平均給与が高い業界は「電気・ガス・熱供給・水道業」で769万円。第2位は「金融業、保険業」で626万円。そして、第3位が「情報通信業」で575万円とあります。

さて、ここから業種総合の平均給与よりも高く、情報通信業と同等がエンジニア。もちろん労働内容にもよりますが、決して稼げない仕事とはいえません。

アメリカの方がはるかに稼げるが・・・、必ずともいえない?

では、ついに海外の番。ここはやはりアメリカのデータをと、あれこれ探してみると・・・、日本で発信されている情報にはかなり差がある。シリコンバレーで成功した会社のエンジニアなどは、なんと1000万円以上が平均との情報もちらほら。確証がなかなか得られないので、最終的に参考にしたのが「PayScale」。アメリカのリサーチ会社が提供しているもので、5,400万人もの賃金データから職業ごとの年収やボーナスなどの平均を教えてくれるサイトです。

参考:https://www.payscale.com

PayScaleによれば、「ソフトウェア関連のエンジニア」の平均年収は「81.995ドル」。「ハードウェア関連のエンジニア」の平均年収は「85.271ドル」(*2018年3月23日時点)。日本円では「約870万円」と「約900万円」です。1000万台には届きませんが、それにしても高い。


この年収の確証を得るべく、「ミシガン工科大学」が公開している「エンジニアの給料統計」もさらにチェック。すると、ソフトウェアでは「70,477ドル」、ハードウェアでは「72,030ドル」とのこと。どうしたことか? PayScaleとは、10万ドル以上の開きがあります。ただ、記事をよく見てみると「Median Entry-Level Salary」との文字を発見。つまり、「就業3年以下のエンジニア」の平均年収なので、ここから考えてもPayScaleには信ぴょう性があります。

参考:http://www.mtu.edu

ちなみに、最低値〜最高値はソフトウェアで「58,462〜121,305ドル」、ハードウェアで「59,951〜127,271ドル」。最大値では約1300万円となり、やはり日本のエンジニアよりはるかに高給取りです。しかし、最低値の約600万円から考えると、エンジニアであれば、誰もが稼げるというわけでもなさそうです。また、アメリカのエンジニアはコンピュータサイエンスを大学で学んだ上での職業だそうで、仕事では相当な実力も必要だと予想されます。

日本もエンジニアに確かなステータスを与えてほしい

エンジニアは、アメリカでは人気の職業であり、その活躍は確かなステータスにもなります。方や日本では、大きな功績を残したとしてもあまり注目を集めません。しかし、国が2000年代初頭からITを国家戦略としてきた系譜、また、今後進むIoTやAI需要拡大を見据えても、エンジニアはもとよりIT人材が重要なのは明らかです。


今回はお金についてのみお話しましたが、冒頭の彼しかり、根本的な不満はお金ではなく、もしかすれば、やりがいや夢を抱けない働き方にあるのかもしれません。IT人材が生き生きと働ける環境はどのようなものか、そこを煮詰めていくことこそが、度々周回遅れともいわれる日本のITを変える底力をつくっていくのではないでしょうか。

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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