いまさら聞けない【情シス基礎知識】基幹システムのクラウド化は、なぜ加速する?

今、基幹系システムのクラウド化が進んでいます。時代の流れがクラウドにあるのは誰しもが感じるところ。でも、長らく自社内にサーバーをおいたオンプレミスがメインだった基幹業務システムまで、なぜ今クラウドサービスに変わろうとしているのか? 今回はそんな疑問をテーマにしてみました!

 

【なぜ今?】対応迫られる、基幹システムのオンプレミス→クラウド

日増しに耳にする機会が増えている、基幹システムやERPのクラウド化。取引先のA社もB社も、さらにC社まで基幹システムをクラウド移行。なぜ、今なのか? ずっとオンプレミスだったじゃないか・・・、というつぶやきが実際にあったかどうかはさておき。近年、基幹システムのクラウド移行が加速しています。

利用にあたっては、費用は使用料のみで手軽(設備投資が不要)、コスト削減も可能といった触れ込みで急速に広まっていったクラウドサービスですが、一時期は「基幹システムのような社内ITインフラには向かない」とも言われていた時期もあります。基幹システムに求められるのは信頼性と堅牢性。利用シーンはほぼ決まっていて、仕様も変動しないので、クラウド環境のメリットとなる「柔軟性・拡張性」とは相容れないとの考えが主流だったからです。

しかしながら、冒頭でも触れたように、最近の動向は180度チェンジ。企業にとって、基幹システムのクラウド化は喫緊に取り組むべき課題ともなっています。一体なぜ”基幹システム×クラウド”が、それほどまでに注目されているのか、今回は考察していくことにします!

 

【時代は変わる】課題が表面化するオンプレミス

基幹業務システム(基幹システム)は企業活動を続ける上で不可欠な社内システムであり、ずっと使い続けるシステムです。情報系システムの比ではなく、稼働寿命の平均は約14年といわれています。そんな長寿命の基幹システムに対し、クラウド化のニーズが高まっています。但し、これは単に使用中の基幹システムのサポートが切れ、寿命を迎えたからではありません。複数の理由でオンプレミスにおける課題が表面化しているからなのです。

オンプレミスの課題を考える—

 

【オンプレミス課題①】バカにならない運用コストやハードの更新疲れ

サーバーなどのハードウェアの経年劣化や故障に伴いメンテナンスコストは発生します。さらに、機能は据え置きでも、ハードウェアは5年に一度更新を行うのが一般的。運用コストに加え、その労力もバカになりません。景気が悪くなるとITコストはすぐに削減しろと言われますし、インフラ管理が可能な人材の不足への対応も恒久的に必要となるなど、オンプレミスで構築された基幹システムを維持することが難しい環境になりつつあります。

【オンプレミス課題②】予見できないシステム障害対応と復旧のつらさ

サーバー障害対応と復旧は大切な情シスの仕事。しかしながら、そうはいっても、いつ起こるともしれない”障害”という性質上、夜間に呼び出されたりと、対応に振り回されることもしばしば。百歩譲って、情シスが複数名いる会社であれば、一人ひとりに対する労力過多は防げるかもしれませんが、昨今では社員数百名規模の会社でも「ひとり情シス」や「ゼロ情シス」が増えているといいます。無論、これらの情シスのみなさんすべてが、自前で障害対応を行わなくてはならない境遇にあるわけではないでしょうが、オンプレミス運用のサーバー障害対応は大きな負荷となりがちです。

【オンプレミス課題③】サーバーを社内に置き続ける不安

災害により社内サーバーがダウンしてしまえば、基幹システムも止まります。東日本大震災では、津波により紙データだけでなく、業務PCや社内サーバーも流されてしまい、事業再開に多大な労力と時間を費やしたと言います。今後、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震の発生も危惧されている昨今、既存システムのオンプレミス運用に強い危機感を募らせる企業は多く、BCP対策、システムの可用性の観点で問題となっています。

【オンプレミス課題④】海外展開がむずかしい

世界に類を見ない少子高齢化が進む日本。内需減少により、多くの企業が海外展開の拡大を図り、ビジネスのメインストリームは海外にシフトしつつあります。このような「グローバル経営基盤」を築くためには、基幹システムが「社員が海外にいてもアクセスできるものであること」、そして「現地法人でもコストをかけずスムーズな導入ができること」が重要になります。専用線でつながれたオンプレミスでのシステム構築も可能ではありますが、その為には大きな労力とコストを伴います。

 

【クラウド見参】クラウド化はなにがメリットなのか?

では、おまちかね。クラウド化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

【メリット①】相乗り効果による低コストサービス提供

クラウド化することで、オンプレミスでの基幹システム運用の課題を解消することで生まれる事業の余裕は、顧客サービスなど業務の質の改善にもつながります。現代の激しい競合環境のなかで、低コスト化する余地があるということは、競合他社との差異化を図る一手としても大きく期待できます。

【メリット②】負荷状況に応じたハードウェアリソース変更の柔軟性

クラウドのメリットとして、ハードウェアリソース(CPUやメモリ、ストレージ)を“いつでも”“すぐに”変更することができます。これにより、構築時の「最終的に求められるスペックを想定したサーバー導入」や、運用時の「サーバーの入れ替え」も不要です。業務を効率化し、”Time is money”のごとく、ビジネス拡大に合わせた素早いシステム増強を行えます。

【メリット③】サーバー購入費用や保守/運用コスト不要

(自社内に)物理的なサーバーが必要ないため、従来必要であったサーバー機器購入コストは不要です。また、定期的なHWのリプレースやメンテナンスも必要なく、保守/運用についても大幅なコスト削減が期待できます。またクラウドサービスにはパブリッククラウドだけでなく、プライベートクラウドという使い方も可能であり、パブリッククラウドほどのコストメリットは見込めないものの、保守/運用コストは削減が可能になります。AmazonのAWSをはじめ、MicrosoftのAzure、富士通のFUJITSU Cloud ServiceなどでもIaaSやPaaSといったインフラをサービスとして利用することができ、これにより様々な顧客の要望を満たすことができるでしょう。

【メリット④】使いたいシステムを構築できるできるAPI連携

パッケージ製品では、不要な機能が目立ち、操作も不便ということを感じることもあるでしょう。だからといって、スクラッチではコストが膨大で投資が見合わないので二の足を踏んでしまう。さらに、いくつかのシステムを連携させるとなるとそのカスタマイズも大変。このように、自社とって“ベターな”、基幹システムの構築は結構ハードルが高いものではないでしょうか。

一方、クラウドの基幹システムでは、クラウド会計ソフトで知られるfreeeの「freeeオープンプラットフォーム」やピー・シー・エーの「PCAクラウド Web-API」など、公開された「API」による機能連携がトレンドに。これにより、「会計管理システムはA社のもの」、人事管理システムはB社のもの」のように、それぞれの業務に適したシステムを用い、あたかも一つの基幹システムをスムーズに構築することができます。

【メリット⑤】専門家による安定運用

オンプレミスでの基幹システムの運用は、現場での対応が必須。しかしながら、近年「社員の世代交代で、構築や運用保守を任せられる人材が少ない」など、長期運用が求められるオンプレミスの現場では顕在化しています。これを解決する策の一つがクラウド化です。システムインフラの運用はサービスを提供する専門家が行うため、運用ノウハウを社員に継承する必要がなく、「大幅なシステム運用負荷削減」を実現できます。

また、「セキュリティ対策」も同様に、サービス提供者が管理します。この点については、“重要なシステムのセキュリティを一任する”ことに不安を覚える声も多数あります。しかし、システムが複雑化するとともにサイバー攻撃も進化する現代。移行先のクラウドが「高いセキュリティなのか?」を熟慮する必要はありますが、最近では自前対応よりも、プロに任せることにメリットがあるとの考え方が広まっています。加えて、自社にデータセンター(またはサーバールーム)を持たないことで、BCP対策も強化できます。

さらに、「情シスの能力を解き放つ」かも?−−

基幹システムのクラウド化は、情シスの仕事を変える可能性も秘めています。ハードウェアの保守管理が不要になるため、保守をコア業務とした「守りの情シス」ではなく、最近注目を集める「攻めの情シス」として積極的な活動を行いやすくなると考えられます。今、攻めに転じたいという情シスの人たちも多いと思いますが、そのきっかけこそ、”クラウド化”なのかもしれません。

 

【急がば回れ】クラウド化の前に押さえておきたいポイント

これまでの内容を見ると、クラウド化に多くの魅力があるのは確かです。しかし、既存のオンプレミス環境によっては逆にクラウド化がネックとなり得る場合もあります。少し視点を変えてみましょう。

例えば、「コストの捉え方」について。“クラウドならすべてが安くなる”というイメージもありますが、必ずしもそうとは限りません。確かにハード購入と管理が不要になるため、ハードにかかわるコストを削減できます。しかし、基幹システムで用いる「SQLServer」などのミドルウェアは、オンプレミスとはライセンス料金の体系が異なり、経年利用によりオンプレミスよりもコスト高になる場合もあります。また、もともと低コストで運用してきた小規模な基幹システムの場合や、システムの規模拡大を将来に検討していない場合も、コストメリットは感じにくいかもしれません。

次に、「複数のクラウドサービス利用による管理データの分散化」です。業務の根幹をなすシステムだけに、クラウド化に慎重になるのは当然。システムごとに適したベンダーを探し、順次クラウド化を進めることもあると思います。しかし、こういった場合、ベンダーごとのアカウント管理が複雑化しやすく、業務負荷を高めてしまう原因になります。

また、「従来からの業務手順/帳票などの変更」を求められる場合もあります。あまりに従来からのやり方にこだわったことで「SAPを導入したにもかかわらず、導入メリットがほとんどなくなってしまった」などと言うこともあるそうです。自分たちの業務を再構築する勇気も必要となるでしょう。

更には、スキャナなどのデバイスとシステムを連携させている、あるいは複雑な仕様を構築しているなど「クラウド化が難しいオンプレミスが多く、一部のシステムのみをクラウドにする」場合。部分的なクラウド化のために、オンプレミスとクラウドの連携ノウハウをあらたに習得しなければならず、業務負荷が高まる可能性もあります。(それらを解決できるハイブリッドクラウドなども登場しています)

 

このように、既存の環境で、クラウド化のメリットは変動します。クラウドへの移行は、現状のアセスメントをしっかりと行いメリット/デメリットを検証していきましょう。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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