使える! 情シス三段用語辞典77「SoR(モード1)/SoE(モード2)」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け「SoR(モード1)/SoE(モード2)」の意味

一口に“ITシステム”といっても、世の中には規模も用途もさまざまなシステムがあふれるほど多く存在している。それらITシステムは、その役割や機能などの観点で分類することができる。そうしたITシステムの分類方法はいくつもあるが、「SoR(モード1)/SoE(モード2)」もその一つ。
「SoR」とは、システムをその目的と運用の方向性の観点で分類したもので、正式には「System of Record」つまり『記録のシステム』という意味である。別名として「モード1」ということがある。SoRと対比されるのが「SoE(モード2)」といわれるもので、「SoE」とは「System of Engagement」つまり『繋がりのシステム』というものだ。
この分類方法は、アメリカのガートナー社が提唱する「バイモーダルITモデル」におけるシステムモデル分類である。「バイモーダルITモデル」では、ITシステムを次の2種類に分けて考える。信頼性を重視する「SoR」と、スピード性を重視する「SoE」だ。
SoRは、記録を管理するためのシステムともいえる。例えば顧客情報の管理システムや販売管理システムなど、扱う情報の完全性と信頼性、セキュリティが重要視される今まで情シスが管理してきたようないわゆるレガシーなシステムだ。
それに対しSoEは、顧客と企業活動のつながりを作り出すためのシステムだ。例えばSNSや販売促進用Webページやゲームアプリなど、機能の使いやすさやイメージの良さと更新スピードの速さなどが重視される。こちらは比較的新しいシステムである。

SoRは、情報化社会以前の企業活動がIT化された産物である。つまり、その昔は帳簿に書き込まれていた情報の管理をシステム化したものだ。元が帳簿なのでシステム要件もはっきりしており、堅牢なつくりであることが求められるシステムだ。ここ数十年で企業内での情報管理の手法はどんどんITシステムに移行していき、SoRのシステムに対しては構築・運用のノウハウはIT業界だけでなく社会全体に貯まってきたといえる。
これに対してSoEは、現在進行中の社会全体のデジタルトランスフォーメーションの産物であるといえる。デジタルトランスフォーメーションとは、従来の活動をIT化するのではなく、ITを使ってまったく新しい価値観や活動を生み出していくことである。企業は、自社の製品をどう効率的に売り出すか、また、顧客にどのような新しい体験を提供するかを画策している。そこで活躍するのがSoEのシステムだ。SoEのシステムは新しい分野の開拓という特性からシステム要件が確立しているわけではなく、模索しながら開発が行われる。SoEは一般ユーザーへの親和性とスケーラビリティが重視される。ごく最近聞くようになった「CDO(Chief Digital Officer)」という役職は、こうした企業活動のデジタルトランスフォーメーションを担う役職である。

バイモーダルITモデルでは、単にSoRとSoEを使い分けるだけではなく、その特性を理解し柔軟に連携させたりすることも要となる。具体的にはSoEで顧客を獲得しバックグラウンドはSoRで堅実かつ迅速に処理を行うなど、それぞれに適した運用方法を確立していくことだ。こうした考え方がデジタル化時代の企業活動に求められている。

 

二段目 ITが苦手な経営者向け

とあるメーカーの社長、営業部長といっしょに情シス添田さんと話していました。

社長:あーあ、冬は金魚鉢の売り上げがいまいちなんだよね。なんかイベントとかやってさ、もう一歩踏み出して売りたいんだよね。

営業部長:販促イベントも昨年からけっこうやってますけどね。社長、イベントより流行りのSNS映えとか何かがいいんじゃないですか。

社長:SNS映えねえ。そういうのよくわからないんだよなあ。

添田さん:SNS自体はうちもやってますよ、金魚鉢のアカウントもありますし。僕が情報発信してます。

社長:ああ、そうだったなあ。SNSで、うちの商品への反応はどうなんだ?

添田さん:そうですね、けっこう愛好家はいる感じはしますね。ニューモデルの発表のときはいろいろユーザーの方からのアイディアも書き込まれていましたし。だから、そうした層へのアプローチができるともっと良いと思いますけど。

社長:そうだな。お客様の声をもらえたり、愛好家の皆さんが楽しく交流したりできる場があるといいな。

営業部長:そういえば、競合のA社で、金魚鉢体験型Webサイトを作ったって言ってたな。

添田さん:あれ評判良いみたいですね。情シス内でああいうの作りたいって声もありましたよ。

社長:そんな簡単に作れるものなのか?

添田さん:全然簡単ではないですよ。そういうWebシステムってうちで作ったことないからノウハウないし、実際どのくらい需要があるかもわからないですし。どの規模でスタートするか決めるのも大変です。

社長:それでも、作る価値ってあるかな?

営業部長:A社はあれで売り上げが激増したらしいんですよ。今の時代、そういう新しい取り組みが評価されるんでしょう。

添田さん:ああいうシステムは、「SoE」といって新しく出てきた概念のシステムなんですよ。今までの社内で使うようなシステムとは違って、お客様と商品をつないで、商品を知ってもらったり好きになってもらったりためのシステムなんです。世間のニーズにうまくはまればイベントよりもずっと販促効果があるかもしれません。とはいっても、うちはまずお客様情報管理システムの更改が先じゃないですか。そろそろデータがぱんぱんだし処理も遅くて。ちなみにこっちは「SoR」というシステムです。データを安全に管理したり運用するための業務用システムのことです。

社長:SoRとSoEか。うーん、A社の話はくやしいけど、ひとまず添田さんの言う通り、うちはSoRのシステム改善が先かな。

 

三段目 小学生向け

今回のテーマはコンピュータシステムの「SoR」と「SoE」という分類についてです。
「SoR」って何だ?という話に入る前に、まずは『分類する=種類を分ける』ということについて少し考えてみましょう。

例えばかごいっぱいの野菜があるとします。皆さんはどのように分類しますか?「ピーマン」「トマト」など野菜の種類ごとに分類してもいいですね。でも、買い物の後だったら「冷蔵庫にしまう野菜」「常温で保存する野菜」という分け方をすると便利ですよね。もし夕ごはんの前だったら「カレーに入れる野菜」と「サラダにする野菜」という分類だと料理にとりかかりやすいです。分類とは、ただ分けるだけではなく、何かをするときに便利なように分けることが大事なのです。
さて本題の「SoR/SoE」についてですが、これは野菜ではなくコンピュータシステムを分類したものなのです。コンピュータシステムといっても、いろいろなものがあります。皆さんはインターネットやゲームをやりますよね。それもコンピュータシステムですし、コンビニで店員さんが商品のバーコードをピッと読み取ってお会計してくれるときのあの画面付きのレジもコンピュータシステムです。ほかにも、お店や会社、街じゅうにコンピュータシステムはたくさんあるのです。
こうしたたくさんのコンピュータシステムを「働いている人のお仕事を便利にするために使うもの」と、「いろんな人が使って楽しさや新しい発見をさせてくれるもの」に分ける分類が「SoR」と「SoE」です。「SoR」は正式にはSystem of Recordといい『記録するシステム』、「SoE」はSystem of Engagementといい『つながりを生むシステム』ともいわれています。例をあげれば、さきほどのコンビニのレジは「SoR」でインターネットやゲームは「SoE」です。このような分類をするのは作り方や使い方がちがうからです。「SoR」のシステムは、お仕事で使うものなので、まちがいがあったりとちゅうで止まったりしては困ります。そのため、コンピュータが絶対まちがえないように、そしてがんじょうにできていますが、そのように作るためには時間がかかります。「SoE」のシステムは、楽しさや使いやすさのほうが大事です。インターネットゲームが何日も何週間もずっと同じステージだったら飽きてしまいますよね。そうしたシステムは使っている人が飽きないように、速いスピードで作る必要があるのです。コンピュータシステムを作る会社や使う会社の人がこうした分類を使って考えると、「これから作るシステムはSoRだから頑丈に作らないと!」とか「このシステムはSoEだから毎週更新の予定を入れておこう!」と予定がたてやすくなり、便利なのです。

 

さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】

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