kintoneを“必修”科目に初導入!大阪産業大学のチャレンジで見えたもの vol.5 「学生たちが学んだこと、感じたこと “考える”を重視するワケ」

  • 2016/9/22
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2016/09/22

kintoneが、初めて大学の必修科目のカリキュラムで採用される」という知らせを受けて、サイボウズ社のkintoneビジネスプロデューサー中村龍太氏とともに、大阪産業大学 デザイン工学部 情報システム学科の山田耕嗣先生を訪ねた。新しい取組みの授業を通して、学生たちはどんなことを学び、感じ取ったのだろうか。(全6回 取材・文:井ノ上美和)

「考える力」を鍛える

学生からの感想にもあったが、kintoneの操作はいたって簡単だ。アプリを作成する際も、画面に操作手順が「ステップ1 アプリの名前を入力しましょう」というように表示されるのでスムーズだ。あとはラジオボタン、ドロップダウンなどのパーツを選択し、アイコンをドラッグ&ドロップでフィールドにおいていくだけで、フォームが完成する。一覧表やグラフの作成もドラッグ&ドロップであっという間に完成する。

最初、操作方法の練習で、ToDoリストのサンプルを作っている時の学生の手の動きはスムーズだ。サクサクと手順通りフォームを作っていく。

しかし、チームでアンケートの作成となると、キーボードを叩いたり、マウスを動かす手の動きがとたんに鈍くなる。操作に困っているのではない。アンケートの内容を考えるのに悩むのだ。山田先生は「アンケートの内容で(出来を)判断するわけじゃないから、なんでもいいよ」と声をかけるが、それでも悩む。悩んだ末に「朝ごはん何食べた?」とか「やってみたいバイトは?」などの質問項目を作り、今度は選択肢を考える。朝ごはんなら「パン」「おにぎり」「バナナ」「食べない」といった感じだ。中には「今お財布の中には?」という質問で、選択肢を「英世」「一葉」「諭吉」と一捻りしているチームもあった。「一番大変だったのは、ウケるコンテンツを作れるか、ということです」と言う学生もいたほどだ。さすが大阪!

kintoneに触れてみて、「たぶんこうっていう感覚で作れる」「思っていることが素直に操作できた」「操作で覚えなきゃいけないことがほとんどない」「ポチポチクリックするだけで作れた」というコメントが多くあったが、総じて「とにかく操作はカンタン、だけどコンテンツを考えるのが大変だった」というのが共通の感想だった。

 

しかし、このコンテンツを考える時間というのが、非常に重要なのは言うまでもない。今回の授業でも山田先生はあえて“考える時間”を多めにとっていた。

また、「プログラムの作成は授業などでいろいろやっていたが、他人と協力して何かを作るというのはまだ慣れていなくて」という感想もあった。普段のプログラミングの授業では一人で黙々とパソコンに向かうことが多く、チームで何かを創り上げるという機会はあまりないのかもしれない。けれど実社会では、一人で黙々と何かをやっていればいい仕事というのはほとんどない。必ず“連携”や“調整”が必要になってくる。

感じる機会があれば、感じることができる

2回の授業が終わった後、学生たちに今回の授業の感想を書いてもらった。

 

「ここまで簡単にアプリが作成できるとも思っていませんでしたし、こんな風に共有してアプリを楽しめるとも想像もつきませんでした。自分が作ったアプリをほかの人にやってもらったり、他人が作ったアプリを自分が使ってみたりするうちに、こんな工夫を加えてみたい、こんなものを作りたいなど、どんどんアイデアが膨らんできて、こうしてどんどんいいものが出来上がっていくんだろうなと感じました。」

 

「アンケートで質問を作った側、答える側、どちらとしても手間なく手軽にでき、クラウドサービスの便利さを実際に痛感出来た。総じて今ままでふわっとしか知らず触れることのあまりなかった“クラウドサービス”に対し興味が湧いた」

 

「アイデアはあるのにそれをうまく伝えることができない、作れないということもやっぱりあると思う。プログラミングをもっと簡単にできるようにすれば、面白い、実用的なアイデアというのがもっと形になりやすいのではないか」

 

「これからはシステムの構築作業だけでなく、情報収集・利用促進といった仕事のスキルが重要となってくる。速いスピードで進化する膨大な情報を一人で収集・判断・使いこなすのは不可能なので、エンジニア同士の横のつながりが重要となってくる」

インタビュー中の著者

一番印象的だったのは、授業中にインタビューした学生のこんなコメントだった。

 

「アンケートの回答の選択肢を考える時に、たぶんみんなこれしか選ばないだろうなと思うものしか思いつかなくて。でもとりあえずいくつか選択肢は作らないといけないからムリムリ考えてフォームを作ったんです。で、みんなが答えてくれたアンケート結果を見てみたら、意外とみんな回答がバラバラなんですよ。絶対1番しか選ばないだろうと思ったのに、他の選択肢を選んだ人がたくさんいて驚きました。みんな結構違うこと考えてるんだなって思いました」

 

他の学生からも「アンケートを作ったとき、内容はもちろん、質問や回答欄の作り方も各チームでそれぞれ違ったので面白いと思った」というコメントがあった。

「みんなが自分と同じように考えるとは限らない」「それぞれ価値観が違う」、よくコミュニケーションの研修などで聞く言葉だ。人はそれぞれ考え方が違うなんてことは、言われてみればわかるけれど、実生活でトラブルが起きるとき、たいていはこの「他人と自分は違う」を理解しきれていないことに原因がある。

他にも「アンケートの内容、なんでもいいよって(先生に)言われたけれど、自由すぎるとアイデアが浮かばない。ある程度絞り込まれていた方が考えやすい」と言う学生もいた。「自由すぎるとアイデアが浮かばない」、これもデザイン思考やアイデア発想でよく言われることだ。

山田先生が「1つの授業からこちらも色々学べます。改善点も出てくるし、想定外の反応や効果も出てきます」と言うように、学生たちはそれぞれ違った角度から物事を捉え、さまざまな反応をする。

最近の若者は感受性が低いと言われるが、果たしてそうだろうか。今回の授業を受けた学生たちの反応や感想を見る限り、環境や機会があれば、彼らはきちんと感じ、吸収している。

今の日本の教育では、とにかく「考える」というプロセスが欠けている。言われたことを頭でふむふむと理解するのと、自分自身が体験し、気づき、考え、自分の言葉で語れるようになるのとでは理解度や“腹落ち”度が全く違う。

“腹落ち”しなければ、人は自発的に動くことができない。

井ノ上美和(いのうえ・みわ)

メキシコ、スペイン在住歴6年のラテン系。通信ベンチャー、医療用具メーカーなどの国際ビジネス業界で、オペレーション・営業のマネジメント、採用・社員教育、ISO/FDAの品質監査、広報、システム構築など、さまざまな業務に携わった経験を活かし、海外および国内企業で業務・組織改善、人財育成などのコンサルティングや研修を行う。学習院大学、HAL東京などの教育機関や大手IT系企業を中心に、人生観や生き方をテーマにした講演会も展開。スペイン語の通訳翻訳業では、ビジネス通訳のほか、フジテレビ「奇跡体験!アンビリバボー」などメディアにも出演。ジョーシス顧問。

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