PCNW【第一回ITトレンド勉強会】RPAに情シスはどう関わるべき?

情シスは、目まぐるしく移りゆくITトレンドと果たしてどう向き合うべきか? 毎回その道に造詣の深い講師が登壇し、さまざまな業界の情シスがディスカッションを行う勉強会が、PCNW(PC・ネットワークの管理・活用を考える会)主催の「ITトレンド勉強会」だ。その今期第一回目が、2018年10月18日(木)、クオリティソフト本社にて開催された。テーマは「RPA」。今、業務自動化で多くの注目を集めるITツールである。

RPAは、その言葉を聞かない日はないぐらいメディアにもたびたび紹介され、IT展覧会に足を運べば数多くの製品が展示されている。だが、それらは往々にして、「スキル不要で誰でも開発可能」という謳い文句が多い。“誰でも”とは、もちろん現場。つまり、情シス不要で使える業務自動化ツールという触れ込みだが・・・、果たして実際はどうなのか。

その解を含め、「推進はどのようなフローで臨むべきか」「どう使えるのか」「ツールは何を選べばよいのか?」など、昨今RPAに対する疑問が湧出するなか、リアルな事例に触れられる講演と白熱したディスカッションが繰り広げられた第一回ITトレンド勉強会。その開幕は、講師を務める、キヤノンITソリューションズ管理本部情報システム部IT企画課課長・阿部琢真氏の、「RPA推進は情シス主導であるべき」という一声からはじまった。

 

【講演】情シス主導で行うキヤノンITSのRPA推進

第一部の講演では、阿部氏により、現在推進中のキヤノンITSのRPA事例と、「情シスとしてRPAとどう向き合うか」についての講演が行われた。

さっそく本題に移る前に、まずキヤノンITSの概要に触れておこう。同社は、キヤノン製品の国内展開および関連ソリューションを事業とするキヤノンMJグループの一員であり、近年飛躍的な成長を見せるITソリューション事業の中核を担う企業だ。「SI」「ITインフラ」「エンジニアリング」の三事業をコアにしており、2017年12月期の単体売上は798億円。社員は3,812名を数える。

同社の社内システムは、親会社であるキヤノンMJが提供し、情報セキュリティやIT投資についても統制を行う。この体制が、RPAを推進するきっかけとなった。

阿部氏はこう話す。「私を含め、当社の情報システム部が、自社の既存システムの改修改善や新システムの要件定義に関わることはなく、あらたな提案も容易ではない。ここから、現場との接点がきわめて少なく、情シスとして危機感を感じていた。また一方、世間では、生産性向上に貢献するAI、IoT、デジタルレイバーといったデジタル化の大きな波が到来している。その動向に焦りに似た感情もあった。」

ここから、「聞けば現場課題も多数。現場と緊密な関係を築き、自分たちで業務改善を提案できることはないか」、との思いが募ったという。そうして、RPAの可能性に大きな期待を寄せていった。

転機が訪れたのは、2018年3月。キヤノンMJがグループ全体にRPAを展開するRPA推進部を設立した。それをチャンスとして、阿部氏はキヤノンITS内でのRPA推進を打診。情報システム部が担当できる環境を整えた。

推進については、「RPAルール策定」「ライセンス管理」をキヤノンMJのRPA推進部が担当し、「運用・管理」「シナリオ作成「開発者認定」「シナリオ審査」「ナレッジ共有」は自社で行う体制を構築した。プロジェクトは目下推進中で、直近では第一弾RPAとしてWinActorを活用した「基幹システムで出力できない手書き請求書の発行依頼システムへの自動登録」を発表した。従来はマンパワーで33.3時間/月を要するが、ロボットに置き換えれば18.7時間/月。年間175.2時間の削減を期待できる。阿部氏はまだ大きなインパクトのあるRPA化は実現できていないとするが、これまでの結果として以下の感想を述べた。

・「情報システム部の本来のミッションのひとつ『現場の業務改革をITで実現』に取り組んでいる実感がある」

・「RPA推進は情シスが主導すべきである」

加えて、“主導すべき”、との詳細をこう話す。

「誰でもロボットを手軽に作成でき、自動化により業務負荷軽減と効率化をめざせる一方、手放しの導入では大きなリスクが懸念される。たとえば、ロボット不正利用による『内部統制上の懸念』、ロボットが停止すれば業務も止まる『ブラックボックス化』、管理者不在による『野良ロボット』。加えて、効果が出ず、導入コストを回収できない『業務自動化の勘所』。これらリスクを回避しPRA化の効果を最大化させるためには『ガバナンスを効かせながら推進』を行うことが必須である。では、その適任は誰か?」

続けて、阿部氏は「それは情シスである」とし、情シス推進のメリットについてこう語った。

「業務の実態に合ったルールづくりが可能で、ITによる内部統制の勘所を持つ。ITスキルをはじめから有しており、PRA推進に必要なクライアントPCやサーバーなど環境構築もスムーズ。さらに、ロボット開発は、これまで培ってきた基幹システムや業務システム開発と開発プロセスが似ており流用も可能で、現場のロボット開発者育成もできる。まさに、適任だといえる。また、RPAの推進は『業務改革をキーワードにした現場とのコミュニケーション』に活用でき、『情シスの価値向上』も期待できる。」

そうして、講演終盤では、かのウォルト・ディズニーの名言『ディズニーランドはいつまでも未完成である。現状維持では後退するばかり。』を引用し、「情シスのこれからの姿勢」についての言及もあった。

「近年、不要論などもあるが、不要というよりも、変化を求められているのだと感じる。RPA然り、情シス側から業務改善に貢献できるITツールはまだまだある。そこにこれまで培ってきたスキルや知識を集中させ提案していくことが、次世代の情シスのあり方だと考えている。」と話し、大きな拍手のなか講演は終了した。

現在、阿部氏はWinActorに加え、UiPathを活用した「営業部門の受注システムへの登録」「事業所入退館ログの自動出力」などの自動化案を試行しているという。また、“RPA御三家”である「WinActor」「BizRobo!」「UiPath」を自社活用視点から主観評価を行なった解説もあった。

 

※阿部氏による主観評価

 

【ディスカッション】RPAに対する情シスの本音

第二部では、現在RPAを稼働させている、導入に向け情報収集を行なっている、またはRPAには懸念があるなど、さまざまな企業の情シスが集いディスカッションを行なった。果たして、RPAに対する情シスの本音とは何か。ディスカッションで出たリアルな事例を「期待・メリット」「懸念・課題」に分け、目を引いたものをいくつかピックアップする。

【期待・メリット】

・大量なデータを扱い入力作業が煩雑/ルーチンな業務に期待できる

固定資産管理システムの管理で当社は一人あたり300~500件ほどの入力作業が発生する。しかし、その担当者数名の業務負荷低減のためにシステム開発は現実的ではない。このような事例にRPAは有用で、大掛かりではなく、スポット的な業務を自動化・効率化できる点にそのよさがある。

・業務の品質向上

いわゆる自動化ではない目的でRPAを活用している。当社は、ものづくりのマッチングを事業としているが、これまでは要件を満たす技術を持った会社を人力で選定してきた。だが、選定に対する知識は一様でなく、また選定会社の保有する技術レベルもまちまちである。そこにRPAを活用し、選定業務の品質向上ツールとして効果を上げている。

・確認作業と集計業務の自動化

グループごとのスタッフの勤怠状況をまとめ、データとして部署に提供するという業務で入力ミスが発生していた。それをRPAに置き換え、入力ミスがなくなり業務負荷も低減した。加えて、当社はECを事業とし、商品を保管する倉庫を複数管理している。この管理にRPAを活用し、「どのくらいの商品が入出庫されるのか」を、自動かつタイムリーに把握できるようにした。これにより、過不足ないスタッフの迅速な配置が可能となった。

・ヒューマンエラーの回避

情報収集の段階だが、PRAのメリットとして大きいのは「ヒューマンエラーの回避」だと感じる。どのような業務においても人が担当する限りミスは避けられない。私見では、自動化というよりも、ミスを回避できる点に最大の有用性があるのではないかと思う。

【懸念・課題】

・RPAはやがてブラックボックス化

稼働のなかで、より利便性を求めたカスタマイズや管理人材の入れ替わりも考えられる。そこから、最終的にブラックボックス化してしまうのではないか、という点に懸念を感じる。長期的・総合的に見れば、RPAのソリューション効果はさほど大きくないのではないか。

・なにを自動化させるかは慎重な判断が必須

管理する上でバージョンアップも欠かせないと思うが、どんな設定でも安定稼働が可能なのか疑問を感じる。バージョンアップで不具合が出るならば本末転倒だし、業務におけるRPAの依存度が高い場合、深刻な問題に発展するかもしれない。ここから、あらゆる業務を自動化できるわけではなく、むしろその領域はきわめて限定的なのではないか。

・どう現場の理解を得ていけばよいのか

RPAに興味を持っている現場も多いと聞くが、そうでない場合もある。情シス主導でRPAを推進させようとしても、「自分の仕事が奪われる」との反対に合う場合も実際にある。経営層によるトップダウンでの推進の前提がなければ、導入のハードルは高い。

・業務アプリなどのアップデートの影響

たとえば、エクセルなどのアプリと連動して稼働させる場合、OfficeアップデートはRPAに影響を与えないのかが疑問。Windowsアップデートも同様だが、変わりゆくアプリ/システム環境に果たして順応してくれるのだろうか。

 

まとめ:RPAは夢のツールではない。だが・・・

業務品質の改善などにもRPAが役立つことがわかった。一方、ロボットの停止、連動アプリやシステムのアップデートによる影響など、懸念や課題も少なくないことがわかった。

また、ディスカッションでは「RPAは過渡期的存在であり、今後はERPなどのシステム側の一つの機能として広く組み込まれていくだろう」といった話題も出て、それを踏まえ、「現在のRPAに多くの業務を担わせるべきか?」との問題提起もあった。このような話題や上記の懸念を考えれば、「ガバナンスを効かせた推進」がますます重要だと感じられる。

ただ、推進するにも注意は必要だ。講演で阿部氏は「RPA導入が必ずしも最適解だとは限らない」とも述べていたが、RPAは情シスの知見、あるいは現場とのコミットが試されるツールだといえるだろう。だが、その使命を帯びる情シスのメリットとして、希望に満ちた意見もあったので、最後に紹介しておきたい。

「RPAを推進すること自体に、私は大きな意義があると考えている。情シスが現場と向き合い、ともに課題を解決しようとする。そのコミュニケーションづくりに有効だからだ。導入に大きな効果があれば御の字だが、最適解ではなく、たとえ導入に至らなかったとしても、情シスと現場をつなぐきっかけとして機能してくれる点に魅力を感じている。また稼働が始まれば、ロボット開発者の育成など、継続的に現場と関わっていける体制を構築しやすい。」

RPAは、企業にとっても情シスにとっても、夢のツールではない。しかし、エビデンスある推進で業務改革をもたらし、かつ情シスを次のフェーズに導くツールなのだ。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】


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