働き方改革の”カギ”とそのために必要なこと

2019年、社会では「働き方改革」が盛んに呼びかけられています。企業はテレワーク/リモートワークといった働き方の多様性に挑戦し、「福利厚生」から「生産性向上」にそのフェーズは移り変わっています。

働き方改革のカギとなるのは「生産性向上」であることは、働き方改革に取り組む先進企業の活動よりわかってきました。しかしながら、この生産性向上を果たすためには、柔軟な働き方の提案やそれを支援する制度構築だけでうまくいくのでしょうか?
今回はこの生産性向上に関する研究を行ったGoogleのプロジェクト・アリストテレスの紹介やそこから導かれる今すぐ取り組むことができることについて解説します。

働き方改革を成功させる方法

頻繁に目にするようになった「働き方改革」。柔軟な働き方を求める労働者たちの声と世間の風潮も後押しして、日本国内の企業においても少しずつ重い腰を上げ始めています。
しかし、「結局、働き方改革ってどうやればいいの? 業務量が変わらないんだから、早く帰れないでしょ?」というのが、労働者たちの、そして企業経営者の本音なのではないでしょうか。

さて、今回はそんな働き方改革について、先陣を切って推進し続ける企業の取り組みを紹介します。改革を成功させたいけどどうしていいかわからない状態を打破するヒントになるかもしれません。

働き方改革を成功させるカギは「生産性向上」にあり

日本マイクロソフトは、日本政府が働き方改革を提唱するより以前、2000年代から「ワークライフチャレンジ」という働き方改善に取り組んでいる先進企業である。2019年4月には、その施策の一つとして週休3日制にトライアルすることでニュースでも大きく取り上げられたことは記憶に新しいのではないだろうか。
そんな日本マイクロソフトの働き方改革の真の目的は、ただ“長時間労働を抑制すること”や“女性活躍”のためではありません。当初は福利厚生の一部だったかもしれないが、あくまでも、企業利益を追求した“生産性向上のため”であるといいます。

<出典:「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」成果報告会資料より>

そのためムダが多かった業務・スペース・モノをとことん削減し効率化していったところ、フリーアドレス制やコミュニケーションツール等の導入につながり、結果、生産性向上と同時に働き方改革が実現されていったのです。

企業から見れば、単に労働者側の都合のためだけに改革を行うという意識よりも、生産性向上で業績アップを目指すというほうが、意欲的に取り組むことができます。
日本マイクロソフトの事例が示すのは、働き方改革は企業と労働者双方の利益につながるということなのです。

「生産性向上」と「チーム作り」の因果関係

働き方改革のカギは「生産性向上にあり」というのはご理解いただいたと思います。では、その生産性向上のためには、どのような施策や考え方が必要となってくるのでしょうか?

ここで、2012年から2016年にかけてGoogleの行ったあるプロジェクトが、その答えを考える上での参考になるのではないでしょうか。
そのプロジェクトは「プロジェクト・アリストテレス」といい、社内で業務を行うチームごとの生産性の高低の要因を探るプロジェクトなのです。

プロジェクト・アリストテレスに見るチーム関係の“良さ”

多くの企業で、業務は個人単位でなくチーム単位で行われています。そのチームごとに、質の高い業務をうまくやるチームと、そうでないチームがあります。
Googleのプロジェクト・アリストテレスでは、あるチームが「うまくやるチーム」となる条件を、さまざまなリサーチと分析を重ね、導き出しました。

その結果によると、うまくやるチームの条件は、チームの中にスキルの高い人間がいることではありませんでした。「チームのメンバーがどのように協力できているか」というポイントに条件があることがわかったのです。

Google のリサーチチームによれば、チームワークにおかる5つの力学のうち、チーム効果が高いチームに共通し、圧倒的に重要だったのが”心理的安全性”であったといいます。以下Googleのre:Workサイトより抜粋。

心理的安全性

心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味している。
心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていない。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があるためである。

そしてリサーチ結果によれば、心理的安全性の高いチームのメンバーは、Google からの離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍多い、という特徴があったのです。

心理的安全性:忌憚のない意見が言える環境づくり

心理的安全性の高いチームとは、つまり、「チームメンバーがお互いを信頼し合っており失敗や非難を恐れずに何かを言ったり行ったりすることができる」ということなのです。
現状において課題であると思うことをメンバー同士で共有することは業務改善につながりますが、「でも、そんなことを言って不満をこねるやつだと思われたらどうしよう」とか「新しいことを言い出して、もし失敗したらバカにされるかな」などという不安もあるものです。
それを一歩飛び越え、新しい提案をしやすい環境であるかどうかということなのです。

例えば、メンバー同士が他者の非難を気にして委縮している状態であった場合は、

日常業務の中で
「この人の業務上の課題を指摘したら、悪く思われるかな」→「言わないでおこう」

会議の中で
「今の意見、ちょっと違うんじゃないかなと思うんだけど」→「言わないでおこう」

何かトラブルを発見したときも
「これを言っちゃったらきっと自分が責められるよな……」→「言わないでおこう」

と、閉鎖的な空気になります。
冷静に考えれば、上のどのケースもちゃんと発言したほうがいい結果を生むと考えられますよね。もし、心理的安全性が高いチームであれば、積極的に課題を解決し、忌憚なく意見を言い合えることでより良い解決策が見つかりやすくなるでしょう。

新しいことに挑戦するときは、誰でも不安とストレスを感じます。しかしながら、安全が保障されていると感じられれば、挑戦に飛び込んでいくことができます。
業務とは、新しいチャレンジをし続けてこなしていくものです。チームメンバー同士が協力でき、その環境が安全であると思うことができれば、より良いチャレンジが生まれやすくなるのです。

“安全な”チーム作りのために職場で考えたいこと

Googleでは、こうした心理的安全性の高いチーム作りのためのガイドを公表しています。
まずは、どういう改善を行いたいかの意識をチーム内で確認し、共有すること。そして、チームのメンバー同士や上司を交えたディスカッションを通して、チーム改善策の実施とモデル化を継続して行っていくことが推奨とされています。

このディスカッションでは、そのチームにおいてメンバー自身がどう感じてどういう状態にいるか等、率直に話し合うことが重要です。
こうしたディスカッションを行うときに心がけたいのが「アサーティブ・コミュニケーション」になります。アサーティブ・コミュニケーションとは、相手を尊重しつつ自分の意見を言うというコミュニケーション方法で、企業向けのコミュニケーション研修でも取り入れられています。

そして、心理的安全性を高めるための以下のようなリストがありそれを実践することでより“安全な“チームに近づけます。

・目の前の会話に集中する(ノートパソコンを閉じる)
・チームメンバーから学ぼうという意欲を持って質問をする
・話を聞いていることを示すために相手と目を合わせ、うなずく

実際にはこの他さまざまな項目がありますが、どれもそう困難なものではありません。しかしながら、現在参加している職場のチームにおいて、上記の3点だけでも全部できているでしょうか? 一度見直してみるのもよいかもしれません。

もちろん、私的に仲良くすることも信頼関係を築くのに役立ちますが、打ち解けようと無理にプライベートを暴露する必要があるわけではありません。
ただ、相手を信頼し、友好的な態度でしっかりと話を聞く、それだけでもチームの心理的安全性は高めることができます。

一見特に関係なさそうなことですが、「相手の目を見て話すこと」が実は、働き方改革につながるのです。

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】

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