【トレンドウォッチ】情シス業務から運用が消えるのか!?自律型データベースってなに?

2019年9月16日、米オラクルは「Oracle OpenWorld 2019」を開催。
そこでは「Autonomous Database(自律型データベース)」の紹介の他、自律型プラットフォームの展望が語られました。既に昨年からサービスインしている「自律型データベース」ですが、そもそもどんなもの?という情シスのために最新の情報をお届けします。

2019年、最新のデータベースはDBエンジニア要らず?

近年、企業においてデジタルトランスフォーメーション戦略や経営力向上のためにビッグデータの活用が叫ばれています。しかしながら、ビッグデータ活用は多くの企業にとってハードルが高いままとなっていました。大容量のデータを安全に運用し保護・管理するためのインフラの整備と維持に多大なコストがかかってしまうためです。

2019年9月16日から18日の3日間、米カリフォルニア州サンフランシスコにおいてオラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2019」が開催されました。その中で語られたのは「世界初、真の意味でのAutonomous Cloudを提供する」というオラクルのビジョンです。
オラクルは2017年の同イベントで、世界初の自律型データベースである「Oracle Autonomous Database Cloud」サービスを発表。2018年には最初の製品「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud」がサービス提供開始されています。

この「Autonomous(自律型)」というキーワードが、ビッグデータ活用への糸口となります。

「自律」とは、「他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。」(コトバンクより引用)の意で、このデータベースに関して言えば、従来はDBエンジニアが行っていたチューニングや運用が自動で行われるということです。

既に実用化されている「Autonomous Database(自律型データベース)」とは、実際何がどう自律し、どのように活用できるのか興味がわきます。

自律型データベースとは

自律型データベースという存在はまだ新しすぎて明確な定義はありませんが、例えば性能チューニングやバックアップ、スケーリング、セキュリティパッチ適用などのデータベースに関するほぼ全ての運用を、AI技術を用いて自動的に行うことができるものを指しています。
ですが、あくまでも「自律」であって「自動」ではありません。
例えば、自動掃除機というのはスイッチを入れておけば自走して部屋中をきれいにしてくれる掃除機ですが、人間がスイッチを入れたり終わったら充電をしたりする必要があります。しかし、もしこれが自律型掃除機であったら、自分で部屋の汚れ具合をチェックし、必要な時に発動して部屋を掃除し、最後に自分でごみを捨てて充電もする、そんなイメージです。

2019年10月現在、こうした自律型データベースとして実用化されているのはデータウェアハウスとしてのOracle Autonomous Data Warehouse Cloud、OLTPに特化したOracle Autonomous Transaction Processingと、オラクルのサービスのみです。運用が自動化されるという情シスにとっては夢のような話(!?)ですが、実際にどういったものなのかその内容を見ていきましょう。

自律型データベースでできること

オラクルの自律型データベースは、以下の3つの観点を実現しています。


(出展:Oracle Technology Network

(1)自己稼働
データベースのプロビジョニングからバックアップ、リカバリ、監視、アップグレード、チューニングを自動化。
スケーリングでは、データベースを停止することなくCPU、ストレージのリソースの増減を行うことができます。

(2)自己保護
脆弱性や外部脅威へ対応するためのセキュリティパッチの適用を自動化。ダウンタイムなしで即時適用することができます。データベースの暗号化も自動で行われます。

(3)自己修復
トラブルシューティング、復旧を自動化。計画停止のみならず、トラブルや設定変更時など計画外停止の際にも、自動で対処を検知し復旧することができます。可用性においては99.995%のSLAが保証されています。

自律型データベースのメリット・デメリット

長年データベースを手掛けてきたオラクルだからこその視点と技術で、既に高いレベルでの自律化ができているのです。しかしながら「本当に運用を任せられるのか、隠れた必要作業はないのか」「本当にデータは安全なのか」「でもお高いんじゃないですか」と、多くの情シスたちは不安に思うかもしれません。

自律型データベースの大きなメリットとして、基本的なチューニングやバックアップ運用設計などは全く不要となり、運用にかかる工数が大きく削減できます。また、人間は誰でもミスをするものですが、自動設定であれば設定ミスやオペレーションミスも混入することがなくなります。機械学習により、利用されていくにつれチューニングやトラブルシューティングなどの精度も上がっていきます。そしてクラウドサービスなので、ユーザーはインフラの管理もする必要がありません。しかしながら、チューニングや設計の「自由度」という点では手作業のほうが勝ります。
トラブルシューティングから復旧まで一連の流れが自動化されているため、ありがちな軽微なトラブルの際は、人が監視~検出~解析~対処を行うよりも圧倒的に速く復旧できます。ただし、自律型であるだけに中身がブラックボックス化しています。重大なトラブルの際は、ユーザーが解析を行うのではなくクラウド運営事業者(オラクル)へ問い合わせと対処依頼をすることとなります。そのため自社での対処計画のコントロールが難しくなる可能性はあります。

また、セキュリティ面でも自律型データベースはメリットが大きいです。従来、パッチ適用は業務に影響が出ないようなタイミングで計画的に停止させて行っていました。しかし、オンラインでのパッチ適用ができるということは、そうした遅れがなく最速で適用できるということになります。ユーザーごと、領域ごとのアクセス制限も可能です。もちろんサービスを運営するオラクルの従業員であってもユーザーのデータにアクセスすることはできないとされています。
但し、アラートログやトレースを見ることはできません。監視に関しても、閾値監視やアラート通知ができないため、何らかのインシデント兆候を見落とす可能性もあります。こうした面では、他ツールと連携をとる必要があります。

そして価格面ですが、現状は似たような自律型データベースの競合がいないため比較はできませんが、オラクルが「あのクラウド」と呼ぶ他社(きっとAWSのことでしょう)の提供する大規模パブリッククラウドサービスと比較し、コストが半分程度に抑えられるとしています。これは運用にかかる人件費を含んでのことで、人件費削減ができるのは確かに大きなメリットかもしれません。しかし、ライバル不在の間はベンダーロックイン状態となることは間違いありません。
更にはサブスクリプション制で必要な分だけリソースを購入することができ、また学習用に無期限で無償利用できる「Always Free」というサービスもあります。

自律化はOSやさまざまなプラットフォームに広がっていく

自律型データベースは大幅な運用管理コスト削減とセキュリティの増強ができ、今まで熟練のエンジニアに頼っていた運用はもっと簡単なものになります。特にビッグデータ活用を考えている企業にとっては便利な道具となるかもしれません。

オラクルはOracle OpenWorld 2019で、自律型データベースに続き自律型OSの「Oracle Autonomous Linux」の提供開始を発表しました。データベースに限らず、インフラ、OS、アプリケーションと、人間による運用管理が不要となるプラットフォームが将来実現していくことになるでしょう。
情シスの業務から「運用」の二文字が消える未来の、その始まりの製品となるかもしれません。

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】

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